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霞ヶ浦スクランブル 2/2

 

土手沿いの道は、すいていた。

時々、農家さんらしき軽トラックとすれ違うくらい。

もっとも、誰もいないのかと言えば、道っ端にはたくさんの車が駐車している。

釣り人だ。やはり降ったあとは釣れるのだろうか?



今日は気温が高かったので、曇天or雨のわりには非常に気持ちよく走れた。

ほとんど貸しきりの土手道を、80のペースでのんびりと走る。

時々気持ちよくツイストしている道があっても、そんなに飛ばさない。ガードレールがないから、道を外れれば霞ヶ浦にまっさかさまなのだ。いくら俺が頑丈だって、新車納入のたびにそんな大ネタかましてたら、命にかかわる。

 

と、トンネルの中で野良犬が雨宿りをしていた。

なので、「驚かしたくないなぁ」と思って、一度単車を停める。

すると、右手の土手の上に、なにやら東屋らしきものを発見。

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ちょうどいいので、わんこが去るまでの間、ここでトイレ&一服にする。
 

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なんの施設だろうと登っていくと。

 
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明らかに休憩所だ。しかし、正体はわからない。

 
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なるほど、この施設の成り立ちはわかった

しかし正体は謎のまま。

トイレを済まして、単車に乗る前に、あちこち見渡してみると、向こうのほうにカンバンが見えた。『道の駅 たまつくり』と書いてある。地図で場所を確認し、それが霞ヶ浦のくびれた部分、東側にあることを確認。

戻ってみると、わんこは姿を消していたので、俺も走り出した。

 
 

とにかく、霞ヶ浦の土手沿いには、駐車してる車が多い。

交互通行になってしまう弊害もさることながら、こいつらは俺の恐怖心をあおってくるので、そのほうが閉口した。何の恐怖かといえば、もちろん、『四国の悪夢』に決まってる。

だってさ、見てくれよ。

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こんなのは、全然OKな方。

ひどいときは、コレよりずっと細い道に、土手ギリギリで停めてあるのだ。

そりゃアンタは自信あるかもしれないけど、見てるこっちの肝が冷えるつー話だよ。いや、まあ、俺がガケ落ちとかそういう系の話に対して、必要以上に騒ぎすぎなことは自覚してるけどさ。

 
 

などと駐車車両に文句くれながら走っていると、その先に難関が待ち受けていた。

おそらく、M109R乗りのほとんどは走ることなど考えてさえいないだろう、その場所の名は、ダートロード。道は砂利か土のまま。ボコボコえぐれてへこんだ部分には、雨がたまって水たまりを形成している。当然、深さなんか見当もつかない。

正直、どう考えても、300kgオーバーのクルーザーで行く道ではない。

ではないが、しかし、俺は行かなくてはならないのだ。

去年の悪夢から、本当に目覚めるために。



俺の辞書にUターンの文字はないのだっ!

 
 

ま、実際はそこまで深く考えていたわけじゃなくて、ココまでM109Rに乗ってみて、RocketIIIよりも明らかに腰高感がないと感じていたのだ。足つきは変わらないけど、それが高さじゃなくて幅な分だけ、安定感がある気がした。

感覚的にイケそうな気がしたのだ(コケる時もそう言ってます)。

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ダートの総距離、およそ500メータくらいだろうか。

走り出して5秒で後悔しつつも、結局、何とか走れてしまったところは、さすが足つきのいいクルーザならではと言ったところだろうか。ちなみに上の写真は、ようやくダートを超えて、ほっと一息ついてから、振り返って撮ったものだ。

越えてきた難関を見て、俺は自信を深める。

ふん、ダートなんて怖くないぜ。

 

石岡市高浜あたりのコンビニで、いったん休憩を入れる。

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ハネまくった泥は、ダートを超えてきた勇者の証(自己申告)。

 
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買って三日目にはこの体たらくなんだから、俺の単車たちって、基本的に不憫(ふびん)だよなと心から反省する瞬間だ。M109Rは近未来シティクルーザー的な見た目をしてるから、泥ハネとか汚れが、余計にひどく見える。

んでも、まだまだ走るけどね。

 


つーわけで、ダートマイスターの称号を(自己脳内で)授与された俺は、しばらく走って次のダートが見えてきたときも、全然、余裕の表情だった。むしろ 男らしい表情で、『かかってこい』的オーラさえ、かもし出していたに違いない。

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さあ、来るならきやがれ。どこまででも走ってやるっ!

 

 

 

 

 

 

 

 
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うん、ごめん。

さすがに行き止まりじゃ無理だ。

「はあっ」と大きなため息をつきながら、俺は心の辞書に『Uターン』の文字をしぶしぶ書き加える。つーか、道の両側、どっちもガケだからね。普通にヘコむっつの。この場所でクソでかいクルーザをUターンさせるのがまた、なかなか難儀な仕事だった。

 


なんとかUターンを終えた俺は、さらに霞ヶ浦沿いを走る。

といっても、そろそろ暗くなる時間。コレはさすがに、一周は無理っぽい。いや、距離がどうとか、疲れがどうとかじゃなくて、あかりひとつなく、道幅も狭く、おまけにツイストしてるこんな道を、夜になっても走るガッツが、俺にないだけだ。

なので、このまま土手を走り、土浦に出たところで霞ヶ浦と別れようと決める。

土浦から国道6号を飛ばせば、家はすぐそこだ。

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霞(かすみ)の向こうに、道が吸い込まれてゆく。

「霞ヶ浦とはよく言ったもんだ」などと、アサッテな感想をつぶやきながら。

俺は新しい相棒と一緒に、機嫌よく走り出した。


家に帰ったら、ビールを飲もう。

 
 
# by noreturnrydeen | 2007-03-25 21:25 | ソロツーリング

霞ヶ浦スクランブル 1/2

 

朝から土砂降り。

なので、ネットで買い物したり、ベッドでごろごろしながら本を読んでいた。

すると、12時ごろだろうか。ちゅんちゅんと言う鳴き声が聞こえる。

俺は思わず飛び起きた。


「んだ? 鳥の声? 雨、やんだんじゃね?」


窓の外を見てみれば、ものすげ怪しい雲行きながら、とりあえず雨は上がっている。携帯の天気予報で確認すると、降雨率が下がってるじゃないか。 つまりこれは、出かけろっつー神様の誘いだろう(違います)。

ものの30秒で準備を済ませると、俺はM109Rにまたがった。

 


最近よく行く、利根川沿いの道があるのだが。

「アレの対岸ってそう言えばまだ走ったことがないよなぁ」

んじゃ、対岸を走ってそのまま、霞ヶ浦に行くとするか。

そうと決まれば話は早い。

国道6号線を北上し、利根川をまたぐ大利根橋の手前から土手に出ると、利根水郷ラインを東行する。途中で雨が降ってきたが、走り出してしまったら、もう、止まらない。このまま栄橋まで走り、川を渡って、初の向こう岸を走ってやる。

栄橋が見えてきたところで、俺の右横から反対車線に出る車がいる。

あんだ? と思ってそちらに眼を向けると。

ウインドウがスルスルと開いて、助手席のお姉ちゃん越しに、運転席のお兄ちゃんが大声を上げた。


「それ、なんてバイクですか?」

「M109R。スズキの単車だよ」


お兄ちゃんはうなずくと、手を上げて俺の後ろに戻った。なかなか豪快な尋ね方をする男だ。気に入った。このまま同じ道行きにならねーかなと思っていたが、栄橋をわたると、彼はそのまままっすぐ行ってしまった。残念。

俺は橋の出口を右に折れて、そのまま利根川沿いに走り出す。

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こっち側の土手沿いは、初めて走る。

 
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左手には田園風景。天気がよければ、もっと気持ちよかったろうな。

 

利根川のこっち側は初めて走ったが、向こう側より車の数が少なくて、気持ちよく走れる。

コレで雨さえなければ言うことないのだが、途中から降り出した雨が本格的になってきた。ゆっくり走るつもりで、半ヘルとウインドシェード(透明のサングラス)だけで出てきたので、パシパシと顔面に当たる雨が痛い

さすがに辟易して、もう少し雨脚が収まるのを待つことにした。

つーか、雨確率40%なのに、カッパも着なけりゃシールドもなし、てのが、基本的にナメてるつー話ではある。いや、景色が見たいときは、やっぱ半ヘルがいいんだよ、ホント。

 

ちょうど、若草大橋の下が、トンネルみたいになって雨宿りできそうだったので、そこで休憩することに決め、単車を停めてタバコを取り出した。雨が吹き込まないところで、とりあえず一服。

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コンクリ打ちっぱなしで、結構カッコいい。

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もちっとうまく撮れれば、壁紙に出来たかな。

 

30分ほど待ってみたが、やむ気配はない。

それでもさっきよりはマシになってきたので、腰を上げて走り出した。

ひたすら土手沿いを走り、適当なところで左折。しばらく走っていると県道5号、龍ヶ崎潮来線にぶちあたる。 雨が降っているのとあいまって、なんだか物悲しい景色だったが、それでも田園風景というのは、やっぱり心が落ち着く。

日本人の心のふるさとなんだね。

俺の先祖は、盗賊だったらしいから、あんま関係なさそうだけど。

 

 

5号線を125号まで行って左折。

5~6kmほど走ると、右手に道があり「浮島」と書いてある。

「浮く島」なんだから、どう考えてもこっちのが水っ気がありそうだと、その道に入った。

こういう推理して行き先を決めるやり方は、Zに教わった。俺なんかだと、当たる確率は少ないけれど、闇雲にただ走るより、『これこれこうだから、きっとあそこはこうだろう』とあたりをつけて走った方が、確かに何倍も面白い。

ホント、今までスピードばっかりで、もったいない走りかたしてたなぁ。

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しばらく走り、「ところでココはどこなんだ?」と、いまさらながら単車を停める。

地図を見て調べたら、どうやら県道206号、上新田木原線らしい。曇天で確認できないが、左手に霞ヶ浦があるはずだ。途中にコンビニがあったので、そこへ寄り、ジュースを買いがてら、レジのお姉ちゃんに道を聞く。

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「手っ取り早く霞ヶ浦を見たいんだけど、どっちに行けばいいかな?」

地味目でおとなしそうながらも、なかなか可愛らしいお姉ちゃんが教えてくれたとおり走ると、なるほど、霞ヶ浦に出た。トイレに行きたくなり、探しながら走る。もう、めんどうだから道端でいいかなぁって思ってきたころ。

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トイレのある駐車場を見つけた。

 
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用を足して、地図を確認する。

そこから一度、霞ヶ浦沿いに走ってみた。

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とにかく、天気が惜しまれる。晴天なら、この数倍はきれいだったろう。

つってもまあ、雨予報バリバリなのに、出かけるほうが悪いんだが。もっとも、このころには雨もだいぶん弱まってきていた。降ったり止んだりの繰り返しだ。カッパなんか着ないで 大正解(そのわりにずぶ濡れです)。

 
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そのまま走っていると、また、206号に出る。

また同じ道を、東へ向かって気持ちよく単車を走らせていると、目の前に橋が見えてきた。

稲敷大橋だ。

本当は、コレを超えたところを左折して、霞ヶ浦沿いに走りたい

だが、ガスの残量が怪しくなってきていた。

とりあえず橋を渡ったらそのまま直進し、国道51号へ出る。ココはかなり広いので、ガソリンスタンドはすぐ見つかるだろう……ほら、あったあった。 ほっと胸をなでおろしつつ、これっぱかしもやる気のなさそうなおばちゃんにガソリンを足してもらって、準備万端。

 

51号から355号に入り、しばらく車と一緒に走る。

もっとも、このまま国道を走る気など、当然ながら毛頭ない。いや、毛髪はまだ大丈夫だから心配ない。やがて、左側に土手らしきものが見えてきたので、適当な道をみつくろって入り込み、土手に向かって走った。ほどなく、土手沿いの道に出る。

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やけに道の右側に寄っているのは、ここがすれ違い用の安全帯だから。

決して、土手の向こうに落っこちるのを恐れたわけではない。

いや、何もない土手は誰だって普通に怖いんだから、別に恐れてもいいのか。

 
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同じ場所、別アングル。

突堤の先で、結構な人数が釣りをしていた。

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さて、それじゃあ霞ヶ浦周遊に参るとしますか。

 
2/2に続く

 
# by noreturnrydeen | 2007-03-25 21:11 | ソロツーリング

200年前の男


最近、地図を眺めているだけで、かるく一時間は過ごせるようになった。

んで、昨日の晩も、布団にもぐりこんで延々と地図を眺めつつ、「明日は日曜日だし、どこかに走りに行きたいなぁ」なんてつぶやきながら、 地図の注釈に目を凝らし、面白そうなところを探していると。

あった。

成田の北東に位置する、佐原に「伊能忠敬記念館」を発見した。



伊能忠敬(いのう ただたか)といえば、日本地図の父

幕府の要請とは言え、ロクな手当ても出ないのに、自腹を切ってまで全国を測量し、本邦初の詳細な日本地図を作ったヒトだ。最近、地図が何より楽しい読み物になっている俺にとっては、ただの偉人と言うより、むしろ恩人とも言える人物だろう。

や、よくわかんねーけどたぶん。

つーか今が人生でイチバン、彼を尊敬してるタイミングなのは間違いない。


つわけで目的地は、伊能忠敬記念館に決定。

仕事がハネた午後2:00、俺は代車のゼファー750をまたいだ。

 



柏から6号線を北上(東行)し、国道356号に入る。

今まで乗りついで来たムダにでかくてクソ重たい変態バイクたちに比べれば、冗談みたいに車体の小柄なゼファー750。こいつなら、すりぬけなんて楽勝だ。国道を抜けてゆくと、我孫子(あびこ)を過ぎて木下(きおろし)あたりで、道は利根川沿いに出る。

目の前が、一気に開けた。

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風は冷たくて強いが、太陽と青空が気持ちいい。

やっぱり、走り出してよかったな。

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すり抜けで高まっていたテンションが、見晴らしのいい道に出て、少し収まる。

回して走ると「もっと回せ」とせっついてくる直列四気筒も、トップ3~4000でのんびり走ってやれば、景色とあいまって心地よい走りが出来る。さすがにジャパニーズ・スタンダードだけあって、フトコロが深い。

 
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安食(あじき)あたりのT字路、ふじみ橋交差点にあるコンビニで一服。

そこからまた、川沿いの道をのんびり、利根川と一緒にゆったりと走る。もう、ぶっ飛ばす気持ちは、微塵もなくなっていた。ちょっとツイストする場所があっ たりしても、カリカリ攻めたりしない。車体任せに気持ちよくコーナリング。

ひらけた道と、青い空。

楽しいね。

 





やがて国道365線は、佐原駅の周辺に差し掛かる。

南に折れてしばらく走ると、「忠敬橋」という案内板が見えた。あとで知ったんだが、この辺のヒトは「伊能忠敬」を尊敬をこめて「ちゅうけい」と呼ぶらしい。だから、この橋の名前もたぶん、「ちゅうけいばし」と読むんだろう。

いや、確認してないけど。



案内板に沿って走っていると、突然、町並みが江戸っぽくなってきた。

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そこそこ、観光客の姿も見える。

どうやら、目的地はもうすぐのようだ。

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写真下のほうに、ちょこっと見える船。

この船、真ん中に見える赤い服を着た女性の船頭さんが操って、どうやら川くだりも出来るようだ。さすがに寒いからなのか、お客さんはいなかったけど。んで、ここと川を挟んで反対側に喫茶店がある。

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いっそのこと抹茶でも出せばいいのに。


ちなみに、『ひきたて珈琲』はこれっぱかしも味わってない。

なんせ、4:30閉館なのに、ついたのが3:30くらい。

まずは、伊能忠敬記念館を堪能しなくてはならないのだ。

『地図眺め大好きっ子』の面目にかけて。


子つーかオッサンだけど。



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近代的な壁にかかる、伊能忠敬記念館の文字。

 
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入り口はこんな感じ。

小さい記念館だったので、1時間も要らずに全部見ることが出来る。

残念ながら、中は撮影禁止だが、彼の作ったいろんな縮尺の地図や、生い立ちをアニメにした番組なんかも見れて、なかなか楽しめた。


ロクな機械もないのに、アイディアと根気、精密な作業によって、当時の西欧の最先端の計測と比べてもほとんど誤差のない、いや、それどころか現在の地図とほとんど変わりない詳細な日本地図を作成したこの偉人に、俺は改めて尊敬の念を抱いた。



同時に、アレがなきゃ、コレがなきゃと、理屈ばっかりこねる自分が恥ずかしく感じた。

なになにがなければ出来ないなんて人間は、それがあろうがなかろうが、結局なにも出来ないんだと思う。とにかく飛び出して、やれること全部やる。あくなき情熱と、錆びない好奇心は、機械や常識を凌駕することを、思い知らされた気がする。

少なくとも、55歳で立ち、71歳までそれをやり続け、やり遂げた男がいる。

その事実に、武者震いが出た。

 



俺はまだ、37歳だ。

伊能は55歳(今の55とは話が違う)で、現代に比べればロクな機材もなくて、命令したやつが金もロクに出さないのに、そんなこと気にも留めず、16年もかけてやり遂げたのだ。


そんな男が、200年以上前のこの国で、確かに生きていたのだ。

 

帰り道、低く傾いてきた陽光の中を、俺はゴキゲンで走った。

日本中を測量して歩いた、伊能忠敬の姿を思い描きながら。

 
# by noreturnrydeen | 2007-03-18 22:50 | ソロツーリング
 

moto君のところで一泊し。

翌朝、5:30打か6:00ころ目を覚ます。

一服していると、moto君も目を覚ました。これから仕事に行きますという彼に挨拶もそこそこ、俺はもう一度シュラフにもぐりこんだ。つーかこうやって改めて書くと、申し訳ない話だね、まったく。親の顔が見たい(親も泣いてます)。

結局、9:30ころ目を覚まし、出発の準備をする。

さて、今日はどこを走ろうか。

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昨日moto君が迎えにきてくれたイレブンで、軽く朝飯を食う。

喋ったり笑ったり、楽しいことが多かったらか、昨日はそれほど呑んでないので、二日酔いもなく、すがすがしい限りだ。天気はいいし、海にでも行こうか。それとも、房総南端あたりまで行ってみようか。

などと考えていたら、鼻水が垂れてきた。

どうやら今日は絶好調に花粉が多いようだ。これじゃあ、走るのもしんどそうだなァと、ちと考え込んでいるうちに、昨晩、話したことを思い出す。ああ、そうだ。今まで行きたくて行けなかった佐倉の『国立 歴史民族博物館』へ行こうなんて話してたんだっけ。

ちょうどいいから、あそこへ行こう。

 
 

行き先が決まったので、俺はゆっくりと走り出した。

顔面はすでに、分泌されるいろんな液体で、大変な惨状になっている。それでも、暖かくて気持ちのいい天気だから、フルフェイスじゃなくてジェットか半ヘルで走りたいなぁなんて思ったり。半ヘルじゃ花粉直撃なのにね。

もちっとモノを深く考えて生きようね、俺。

岩富山田線をのんびり走っていると、突然、道の様子がおかしくなる。

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なにこの林道チックな道。

道はこのままクネクネと節操なく曲がり始めるのだが、気分も、体調も、道のコンディションも、すべてがのんびり走れと言っている。なので気持ちのよい速度を維持しつつ、のんびり景色を見ながら走った。

こんなときはやはり、フォワードコントロールがいい 。

poitaさんやマルゾーもいつ走れるかわからないし、一回、フォワコンに戻してやろうかなぁと思う。一人で走るなら、景色を見るにしても、ちょいちょいまめに停まって撮影するにしても、断然、フォワコンの方がいいのだ。

決めた。ヒマ見てステップ戻してやろうっと。

 



県道289号<岩富山田線>と、県道22号<千葉八街(やちまた)横芝線>との合流。

このあたりで、トトロフレーバたっぷりの景色に出会う。いや、柏だって田舎だから、ちょっと裏に行けば、こんな風景あるんだけど 、全体から醸し出される雰囲気はずっとステキだ。

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バスの待合所らしい。手作り感マックス。

 
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郵便ポストのヤレ具合とか、すげえいい感じ。

思わず、通りがかったおばあちゃんに「こんちわ、いい天気ですね」と挨拶した。おばあちゃんもニコニコしながら「あったかいねぇ」と返してくれる。ステキな景色もいいけれど、こういう交流が、俺はやっぱりイチバン好きなんだなぁ。

寂しがり屋だし(可愛くありません)。

 



歴史民族博物館に到着。

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やたらでかい。

俺の心の取扱説明書に書いてある『かみは歩かない』は通用しなそうだと思ったとおり、このあと、俺的には一か月分に相当するくらいの遠大な距離を歩かされる。つってもまあ、普通のヒトならそれほどのこともないけど。

いや、結構きついかな。どうでもいいか。

 


中に入ると、精巧な模型や、珍しい貴重な資料でいっぱいだ。

ホンモノ系は撮影禁止が多かったが、基本的には撮影できる。フラッシュ禁止とか、細かい注意書きも多いが、古い布や紙はフラッシュの光でも痛むらしいし、仕方ないだろう。

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高床式の模型。原寸大。いのししの剥製がステキ。

 
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銅剣。

ベルセルクチックだが、厚みは異常に薄い。貴重な金属だったんだろうね。

 
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石棺。埋葬の仕方が、懇切丁寧に書かれていた。

今じゃ考えられないような、複雑な様式を持って埋められていたようだ。棺を埋めるだけで、粘土を敷いたり、顔料を敷き詰めたり、石で幾重にも蓋をしたりと、7~8工程くらいある。ゾンビになって墓から這い出るとき、すげえ苦労しそう。

 
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思わず笑ってしまったのが、この食事の写真。

写真右の下級役人のメシ、切なすぎ。麦飯だか粟飯と、切り昆布と、塩。

や、塩て。

小皿に盛った塩がおかずとか、下級とはいえ役人でコレなら庶民はナニ食ってたんだと突っ込みたくなる。コレに比べりゃ、現代人なんかみんな王様だ。


もっとも、上級役人の膳の真ん中にある『アワビのうに和え』だけは、さすがに喰ったことないけど。水もきれいだったんだろうし、きっと、強烈に美味かったに違いない。そのうち、いちど喰ってみたいなぁ。 つーか、ドコに行けば喰えるんだろう。

 
 

そのあとは、いよいよ大好きな戦国時代から江戸時代

写真撮るの忘れるくらい、ものすげえ熱中して見学した。

資料もさることながら、数々の模型がかなり秀逸。ホント一見の価値あり。昔の生活を精巧な模型にしたものが、いくつもいくつもあるので、おもちゃ屋に入ったガキ状態で、食い入るように見つめ倒す。

たぶん、戦国から江戸だけで、2時間以上は費やしたはずだ。

 
 

途中でやかましいガキが居たので、低い声で親ごと注意した。

ぶっ細工な嫁さんが、ものすげえツラでにらみ返すので、「俺の言うことおかしいか?」つったら、旦那の方が「申し訳ありません」とわびてきたので、ポカンとしてるガキに人差し指を立てて「しっ、な?」と言った。

さすがにその後は、うるさいこともなかった。

つーか、せっかくこんな珍しいものや面白いものを見られる好機。腰をすえてじっくり見たいときに、ガキの癇に障るわめき声とか、外に叩き出されないだけありがたく思えって話だ。 興味がなけりゃ、いくら強制的に見たって意味ないんだよ、こんなもん。

 
 
途中の展示室が改装中で、いきなり、近代に飛ぶ。

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すばらしい杯。単車乗りに持って来いってところだ。作ろうかな。

 
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漫画でしか見たことないような、囚人用のオモリ。

現物を目の前にして、コレが足首にハマってたらと思うと、ぞっとする。俺みたいなバカでも、単車に乗って好きなことを言って、それでも自由に生きていける現代に生まれたことを、心から感謝したくなった。

 
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馬出し空濠。

城門の前に築いて、人馬の出入りを敵に気づかれないように作られた土手らしい。手前の植え込みと奥の植え込みの間に、深い堀がある。実際に原寸大でこういうのを見ると、映画やドラマではゼッタイ感じられない実感てのが、心に迫ってくる。

 


結局、4時間以上は居ただろうか。

一部見られない展示室があったりもしたが、総じて人類の文化史を充分に堪能できる、最近見た中じゃピカイチの博物館だった。子供つれてったりとかには向かないだろうけど、好きなヤツなら一回のぞいてみてもいいと思う。

入館料420円は、激安と言っていいんじゃねーかな。

 
 

歴史民族博物館を出た俺は、県道65号、佐倉印西線を北上。

国道464号の渋滞を避けて利根川の川沿いを、のんびりと西行する。

利根水郷ラインのまっすぐな道を走っているうちに、花粉パワーによる分泌物で顔面がえらいことになってきたので、ぶっ飛ばしたりはしない。晴天の心地よい風を受けながら、のんびりお散歩モードで走る。


土手沿いには、あちこちに花が咲き、もう春なんだと主張している。

春の証拠たちを眺めながら、昨日のステキな宴を思い出しながら。

俺はヘルメットの中で、顔がほころんでくるのを止められなかった。

 


朝晩は寒いこともある。

でも。

なあ、みんな。

 

春が来たぜ。

 
 
# by noreturnrydeen | 2007-03-04 22:34 | ソロツーリング

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