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すがすがしい孤独


那須モータースポーツランド(以下MSL)に、サーキット走行に行ってきた。

レッドバロン(以下RB)に買い取られたこのサーキットは、かつてレース活動をしていたZに言わせると、信じられないほどぬるいスタンスのサーキットだということで、詳しく説明してもらえばもらうほど、なるほどとうなずける。

しかしまあ、こちとらサーキット初心者。ぬるま湯に越したことはない。

クルマで運んでくれるというZの好意に甘え、俺はヘルメットひとつ持って、Zのクルマに同情し憐れんでどうする、同乗し、朝6:30、柏を出る。SDRは前日の段階でRBに預けておいたので、身ひとつで行けるわけだ。

 
朝8:30、那須MSLに到着。すでにRBの人たちも来てて、SDRも来ていた。

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ガムテで養生され、異常なほど俺に似合う、貧乏臭い姿になったSDR。

なんだか、小僧時代のマシンを思い出す姿だ。

いや、サーキット的ってんじゃなくて、ガムテの貧乏臭さが。

 
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SDRが車検場で車検を受けてる間に、俺もライセンスの座学を受ける。

 

RBのスタッフH君と、その彼女Sちゃん。

モザイクじゃなくて目線なのは本人の希望。

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サーキットに来る彼と、それを応援しに来る彼女。

すばらしく正しい姿勢である。少なくとも、前前日までアホほどソロツーリングして、そのまま呑んだくれ、次の日にはすでに単車いじり。薄汚く日焼けして、しかも身体の疲労にテンションで気づいてないような男より、100万倍は正しい。

絵的にもこっちが圧勝だ。

さわやかなオトコマエの好青年と、可愛らしい彼女。対するはそろそろ40近くなり、腹も出てくりゃほっぺたも緩んできたてのに、酒と単車のことばかり考えてる、ちょっとアレな脳みそを持つ、ショボい整骨院経営者。

まぁ、完敗だ。

いやまぁ、こんなん自虐的に書いてても、実は自分大好きなんだけどね。

 

第一ヒートがはじまり、ライセンス持ってるヒトは走り出す。

 
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RB柏の店長。

寡黙というか、少なくとも俺の知ってる限りではおとなしいヒトだ。

 
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H君もガンガン攻める。

H君は結局、この日のトップタイムをたたき出した。

 
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んで、座学と実技の終わった俺も、ガンガン走り出す。

この段階では、俺の中でサーキットってのは峠の延長で、『とにかく前にいる速いヤツを追いかける』ことしか考えてなかった。んで、抜けるやつは全部ぶち抜き、速いやつには置いていかれ、だんだんと頭の中がヒートアップ。

で、ココで問題が発生する。



今までの峠走りなら、それでも公道なりの安全マージンを取って走らなくてはならなかった。

だが、ココはサーキット。対向車も来なけりゃ、道に砂や落ち葉もない。突然ダートにもならないし、道に迷う心配もない。 もちろんガケもない。そして何より、むちゃくちゃ視界がよくて、しかもバカみたいにグリップがいい。

つまり、今まで経験したことのない、最良にして最高のコンディションが整った道なのだ。

初めの頃こそ、道を真横に突っ切る(広いので、大外からクリップに突こうとすると、感覚的にはほとんど横断しているように感じるのだ)感覚とか、異常に高いグリップに戸惑っていたが、なれてくれば来るほど、ものすげぇ楽しくなってくる。

 



ブラインドの先を考えた安全マージン。

対向車が飛び出してくることを考慮したライン。

速度超過と、それを取り締まる警察。


 

単車で走るとき、煩わしくも必ず考えなくちゃいけないこれらのことを一切無視していいのである。道の先に何かあるなら、黄色なり赤旗が出る。対向車なんて絶対来ない。飛ばしたって捕まるどころか、むしろまだまだ遅すぎるくらい。

そこに、天国があった。

そして俺は、その天国で至福の時間に酔いしれながら、もっと突っ込み、前のヤツを睨みつけ、喰らいつき、アクセルを開ける。フルブレーキ。カットインしながら次のコーナーを見る。開ける。もっと、もっと、もっと。

 

え? っと思ったら。


もう、転倒していた。

 
もっとも、深くバンクした状態で、そのままフロントが逃げただけなので、感覚的には、突然ヨコからアスファルトという壁を押し付けられた感じ。コケたことより止まってしまったことが悔しくて、さっさと起き上がるとSDRをコーナーの内側に引きずって行く。

身体は痛くも痒くもない。

そこでエンジンをかけ、故障の有無を確認し、再スタート。

そのままピットに戻り、備え付けの工具を借りて、曲がったブレーキレバーとブレーキペダルを修正する。あとでZに聞いたのだが、レバーが曲がらないように、あらかじめ取り付けのボルトをゆるめにしておくのがセオリーなんだそうだ。

なるほどね。

んで、そのまま一回目の走行は終了。

やってきたZに事情を話し、アドバイスをもらって考える。言ってもサーキットはともかく、峠なら腐るほど走ってきたわけで、ココ十年以上『何でコケたかわからない』様なコケ方はしたことがなかった。しかし、今回 はコケた理由がわからない。これが気持ち悪い。

するとZのアドバイス。

 

「先生、タイム見てます?」

「んにゃ」

「トップエンド何速でした?」

「わからん」

「タイムはきちんと確認した方がいいですよ」

「わかった。それじゃあ次はタイムとギヤに気をつけて走る」

 


サーキット経験のあるヒトなら。

『いまさら何言ってるんだ、このバカ。タイムだのギヤだの、基本中の基本だろうが』

とでも言うだろう。

だが、この段階では、先に言ったとおり『峠の延長』としか、考えてなかった。そしてもし、『理解できない転倒』をせずに走りきっていたら、このときのZの指示も、俺の心に沁みてこなかっただろう。気をつけはしたろうが、結局また、他の連中を追いかけるだけになっていたはずだ。

だが、理解できない転倒をしたことで、経験者であるZの言葉を、素直に実践する気になったのである。ナンにせよ、先達の言葉というものには、一聞の価値があるのだ。特にZのような、いい加減なことを言わない男の言葉は 特に。

 

二回目の走行が始まった。

回りに惑わされないようにして、タイムの確認と各ギヤの確認に専念する。

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ホームストレートから1コーナー手前、50メータのカンバンでアクセルを戻しブレーキング。

二速にシフトダウン。ブレーキを残したままカットイン。コースを真横に横断しつつクリップを目指す。クリップあたりからアクセルを開ける。遠心力でタイアが押し付けられるのを感じながら、フルアクセル。

直線でラップタイムを確認しながら、フル加速。

イチバン長いバックストレート。三速。四速。左側の壁の切れ目を目印に、アクセルを戻し、同時にブレーキ。三速。二速。カットインは浅めにとってツバメ返しを超える。コースなりに走りながら、アクセルを開ける。

17Rから15Rへ。15Rはさっき転んだところだ。


何度目かの走りのとき、今度はココでリアタイアが、ズズズっと多めに流れた。

さっきはフロントだったのに、今度はリアが流れた。ココは一番気をつけるところだな。

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三速。ゆるい左の高速コーナーを全開で立ち上がる。

四速。次のコーナーの後にはヘアピンが控えている。

三速。ここは真ん中気味に入っていき、そのまま右側に寄る。同時に二速。

さあ、ヘアピンだ。SDRは得意な部類のコーナーだ。



しかし、どう走ればいいか頭で判っても、なかなかうまくいかない。

おっと、ステップを擦った。そうか、ここはサーキットだ。自分で思ってる速度感覚はいったん捨てなくちゃ。次の週では、ヘアピンの進入でもう少し身体を中に入れておこう。ヘアピンのふたつ目のクリップを超えたら、右に切り替えして、30Rを加速しながら最終コーナーに備える。

そして、ホームストレート。

 

何度か繰り返すうちに、急に全体が見えてきた。

さっきまでは前走者のテールと目の前のコーナーしか見えなかったのに、淡々とコースを攻略していたらコースの全体像が見えてきた。つまり、ココで速く走るためにココは早めにインにつこうとか、サーキットの話では必ず出るような『攻略』が、自分の頭とかみ合ったのだ。

初めて、地図が頭の中でつながった瞬間に似ている。

他にも走っているヒトがいるので、毎回必ず好きに走れるわけではないが、何度かクリアラップを取ることが出来、そのたびにタイムを見る。バラけながらも、徐々にタイムが上がってくる。今のは速かったけど、コレは本当じゃない。

無視してるつもりでも、無意識に前の人間に引っ張られたタイムだ。

ほらみろ、次の周はタイムが落ちた。そんなんじゃダメだ。

自分の力だけで、もっと速く走るんだ。考えろ。もっと考えろ。エンブレ使いすぎじゃないか? 一速高めで進入してみようか。バックストレートで速度を載せるには、一コーナーは突っ込みすぎない方がいいんじゃないか?

 

Zの言葉で意識し始めた自分ひとりの作業に、俺はだんだん没頭してゆく。

バトルじゃなく淡々と、タイムをつめる為にやれることをする。あとで話したときZは『前走者に引っ張られたといっても、その前後で似たようなタイムが出てるし、きちんと評価していいんじゃないですかね』と言ってくれた。

だが、俺はうなずきながらも、まったくの独りで出したタイムだけに嬉しさを見出していた。前述した『そんなんじゃダメだ』のセリフ。アレこそがまさに、俺の中で急激に育ってきた、偽らざる思いだったのだ。

もう、周りの人間はどうでもよくなった。

むしろ、俺はココを独りだけで、納得いくまで走りたい。

俺は、究極の独り遊びを知ってしまったのだ。

 



タイアは、前も後ろも気持ちよく削れている。

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それでも、タイムはたいしたことはない。

もちろん初めてなんだし、筋トレで言えばまだ器具の使い方に慣れてないというところだろう。これからしばらくは、基本となるタイムを安定して同じように刻めるようになることを目指し、コースの全てで淡々とした作業を繰り返すのだ。

安定して同じタイムが出てきてからが本当の始まりだ。

そして俺はその作業に、峠でやりあうのとはまったく違った、しかし、それに匹敵する喜びを感じるのである。バトル好きのイメージがあるだろうが、どうやら俺は、サーキットに限って言えばこっちの方がずっと好きなようだ。

 

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店長のアプリリアRS250と、H君のTRX。


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俺と一緒に座学を受けた初心者のヒトの、GSX-R。

このヒトは俺より4秒も速いタイムを出してた。走り出す前なら、マシンのパワー差だと言ってしまうだろうが、走ったあとの俺は、やはり腕の差だと思う。つーか正直、少なくとも、まともに揃ったタイムが出せるまでは、他人はどうでもいい

 
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モタードもいた。

DR400かな。これも、かなり速かった。テールスライドはしてなかったけど。奥に見えるのはR1。ボロボロに使い込んだ、サーキット専用だ。昨日までなら『もったいねぇなぁ』と思っただろうが、今はちょっとわかる気がする。

 

三回目の走行も終わり、本日の俺のサーキットランはこれで終了。

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店長も着替えて、リラックスタイム。

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Hくんと彼女も、仲良く歓談。

俺はと言えば、コース図を睨み、Zと話し、早くも次のための作戦を考える。

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あまりの暑さに、Zは水まきを始める。

その間も俺は、水分補給しながら、ひたすら攻略方法の検討。コケた15Rへの進入は、コースなりじゃだめなんだってトコロと、バックストレートのための1コーナーの攻略は、とりあえず目処がついた。

もちろん、実践してみなくちゃ、何の意味もないんだが。

 

サーキットが峠の延長ではなく、まったく違った場所だということは、話にはよく聞いていた。しかし、それをきちんと実感してみた今、俺には少し違った意見が出てきている。前述したとおり、場所がどうのこうのという話ではない。

サーキットをバイクで走る。

これでヒトツ。

バイクがあって、それで峠を走るという話とはまったく違った、サーキット+バイクでヒトツの、ものすごくハードでシビアなスポーツ。無駄を省き、一つ一つ積み重ね、ミスを減らし、自分自身と戦う。ゴルフとかビリヤードみたいな、戦略と集中力の競技だ。

むしろ、囲碁や将棋みたいだと言ってもいいかもしれない。



どこまでやれるかはともかく。

単車の乗り方のヒトツではなく、単車、小説書き、読書なんかと並ぶ、まったく別カテゴリの趣味として、これからも続けていこうと思う。そしてたぶんサーキットでの俺は、地味で面白みのない走り方になるだろう。

その予感が不愉快でないどころか、むしろ少し誇らしいのが、今の心境だ。

最後に、単車を運んだり手続きをしてくれたレッドバロンスタッフと、俺をサーキットまで運んでくれたばかりか、貴重なアドバイスをたくさんくれたZに、心からの感謝をささげ、この文章を終わりたいと思う。

 
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八月にもう一回くらい、サーキットを走ろう。

 

あの淡々とした、すがすがしい孤独を味わうために。

 
# by noreturnrydeen | 2007-07-24 17:45 | ソロツーリング
 
 
知恵の輪のそばに、案の定、傘松公園行きのフェリーが出ていた。

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その名も、かもめ3号。1号と2号は見当たらなかった。

がらがらの貸切だったので、蒸れたブーツを脱いで足を冷まし。
 
天橋立を横から眺めて海を渡ると。

 

元伊勢 籠神社(もといせ このじんじゃ)の境内へ。

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浦島?


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本来、この手の作りは嫌いじゃないのだが、さすがに出雲大社のあとじゃ見劣りする。

 

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リフトに乗って、傘松公園に上がれば。

 

 

もっとも有名な景観。

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ガスってるのが、呪わしい。

 

ちなみにコレが股のぞき。

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むろん、この写真に画像加工なんてワザは使ってない。

ちゃんと、カメラを逆さにして撮ったのだ。

景勝に対する、最低限の敬意である。



や、さすがに股の間からのぞいて撮ったわけじゃねーンだけど。

ま、心意気は褒めれ。

 

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二人の愛よ永遠に。

この中で、いくつの鍵が残ってるんだろうねとか、イジワルなことは考えちゃいけない。



むしろ考えるならこっちだ。
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のんびりと風景を眺め、酔いを醒まし、さてそろそろ帰るか。

雰囲気のある、板張りの桟橋チックな廊下を渡り、橋の向こうで待つ愛機の元へ。

お次は舞鶴。

そこから京都市内へ行こうか。それともまだ海側を走ろうか。などと考えながら走り出し、178号を走っていると、つるっと舞鶴まで来てしまった。道はココで、国道27号にぶつかる。右へ行けば京都。左へ行けば海沿いの道から敦賀だ。

敦賀に行く途中には、NEKOさんが言っていた三方五湖レインボーラインがある。

正直、ココまでの道程で、ワインディングはお腹いっぱい走った。その上レインボーラインは有料だ。だが、向こうに行けば気も変るかもしれないし、何より京都市内より混んでないだろう。よし、それじゃあとりあえず敦賀に向おう。

そう決めて俺は、走り出した。

 

誤算。

もね、去年の東北の、青森から盛岡の地獄的な長さを思い出したね。

とにかく、敦賀までがアホほど遠い。距離にしてしまえばどうってことはないのだが、道が込んでるのと疲れてるのとで、下道約100kmが、かなり堪えた。高浜を越え、小浜湾を望むころには、金払ってワインディング走る気は、サラサラ失せていた。

27号の混みっぷりに閉口した俺は、小浜で休憩しながら地図を見てルートを決める。国道と併走する県道24号を使い、そのまま22号と繋いで行けば……と見ていたところで、ちょっと行きたい駅を見つけた。しかも、そこに至るルートは、大好きな広域農道だ。

なので、さっさと県道に乗り、淡々と距離を稼いでゆく。

やがて道は22号になり、北上し始める。5~6km走ったところで、広域農道の入り口を見つけると、俺は意気揚々とそちらへ曲がった。とにかく混んでない道が走りたかったのだ。そして、出雲で詣でた神々は、俺を見放さなかった。

 

 
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遠方に山々を望みながら、ダイナミックにうねる広域農道。

今回、地図を睨みながら見つけた色々なルートの中で、この道がイチバン、嬉しかった。気持ちよかったのは阿蘇だったが、嬉しさで言えばこの道の方が上だ。自分で見つけ、厄介な渋滞をかわし、前後自分だけになった瞬間、目の前に広がるこの風景。

ちょっとウルみかけた。

 
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来てみたかった、小浜線の十村駅。

広域農道は、このまま気分よく15kmほど続き、やがて27号に接続する。さらに10kmほど東行すれば、北陸自動車道、敦賀インターの文字が見えてきた。時間的にはまだ走れる余裕があったのだが、俺はココで高速に乗ると決めていた。

なぜなら、敦賀から50kmも走れば名神高速。そこからもう50kmで尾張一宮。

そう、そこいらから電話すれば、ミチル君やフラナガンを捕まえて、いっしょに走るなり遊ぶなり出来るじゃんと考えたのだ。そのための体力を残しておこうという、40近くなった男らしい、あさましい、もとい、考え冷静な判断だ。

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賤ヶ岳(しずがたけ)SAで休憩&給油したあとは、一気に尾張一宮へ。

 
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サクっと着いてミチル君に連絡するも、なかなか連絡が取れない。

 

つーか、ぼけっとM109Rを見てると、悲しい出来事が訪れる。

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タイア、前後丸坊主。

 
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ブレーキパッド、残り一ミリ。



やがてミチル君と連絡がつくも、どうやら走るのは無理のよう。

なので再会を約束して電話を切ると、俺はM109Rをまたいで走り出す。あとはもう、一気に走るだけだ。名神から東名に出て、ガソリンが怪しくなるまで絶好調に駆け抜け、相良牧の原SAで休憩と給油をした。

 



ところで、ココまで来て連絡入れないと、後でうるさいのが居る。

静岡のけいこだ。

んで、けいこのトコロに寄るか、それともこのまま帰るかと悩んでいたのだが、電話したら出なかったので、んじゃ帰るかと牧の原をあとにする。が、一瞬でも『あっこで呑んだくれて泊まっちまえ』と考えたのが悪かったのか。それとも、単なる疲労か。

目がシバシバと、開けてられなくなるほど痛んできた。

停まって目薬を点(さ)したりしたんだが、どうにもならない。

なのでけいこの店のあるインターで降りると、とりあえずヤツの店を目指した。

暗いわ目が痛いわで、50km/hも出せるか出せないかだ。



よく考えたら、呑み屋が金曜日にやってないわけはないし、万が一やってなかったら、やつの店の駐車場でテント張ってやれば、それはそれで面白い。いやむしろ、それがやりたくなってきた。ムダにワクワクしながら、けいこの店に到着。で、携帯を取り出してみると、ナンだ、着信があるじゃん。

かけ直したらあっさり出て。もちろん店もやるつー話で。

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あとはお定まりの宴会だ。



 

んでまあ、次の日は雨の中、東名、首都高のコンボで痛めつけられつつ、帰宅。

Zと後輩のhorstが遊びに来たので、くっちゃべりながら、今回のツーリングの写真を見せ、バカ話をした。

つーか、俺も結構がんばったと思ったんだが。



horstのヤロウ、リアスでものすげえネタを拾ってきやがった。


これはまぁ、ヤツがてめえのブログででも書くと思うので、そっちを参照して欲しい。

久々に聞いた、悔しいくらいの激ネタだ。


 

やがてヤツラが帰り、俺は荷物を解く。

それから、風呂に入って旅の垢を落とし。

もう一度着替えると、また単車にまたがる。

 

もちろん、これからダチのmotoくんのところに、遊びに行くからだ。



 

今回もまた、たのしい旅だった。

次回もまた、たのしい旅をしよう。

いつまでも、たのしい旅がいいね。

 

さて、今度はどこへ行けるだろう。

 

そして、誰と会えるだろう。

 


山陽~九州~山陰ツーリング 西遊記 /了



 
# by noreturnrydeen | 2007-07-20 00:23 | ソロツーリング
 
 
かみ、帰還する
 

朝一番、目覚めるとすぐ、テントをたたんで撤収だ。

キャンプ場から鳥取砂丘までは、ものの数分。

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能書きを読んでから、階段を登ると。

 

 
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砂丘。

初めて鉛筆以外で書いた小説『雷電』の冒頭に出てくる風景と、頭の中でオーバーラップする。まさに、『砂、砂、砂、だった』てやつだ。申し訳程度に、ちょこっと緑っぽいところがあるのまで、俺のイメージに似てる。この色なら、むしろ海は要らない。

 
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早朝に行けばラクダに乗れると書いてあったのだが、早朝過ぎたようだ。

つーか、『ラクダの姿を撮る場合、携帯での撮影でも料金をいただきます』とか、当のラクダが聞いても『おいおい、無茶すんなよ』言うだろう的料金設定が、興ざめである。全部ラクダのエサになるなら、払ってもいいけど。

 
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昨晩は、そこそこ風が強かったので、綺麗な風紋が出てたのだが、うまく撮れなかった。

つーか自分の足跡さえ、なんだか愛しくなる。脳内ではすでに、ユダ・エンジェルダストの足跡になってるんだけど。でも、あんまり余計なこと書くと、『雷電の続き書け』とか言うムチャなヒトが居るから、この辺でやめておく。

 

充分に砂漠、もとい、砂丘を堪能したら、さて、海沿いを走ろうか。

 
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砂丘海岸に居た、大阪のお兄ちゃん。

さすが大阪人だけあって、俺をも押さえ込むマシンガントーカーだった。

 
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その嫁。可愛らしいヒトだったが、やっぱり弁が立つ。

この夫婦としばらくバカ話を交わす。彼が『こう見えても歳いっとるんやで? 37や』いうから『がはははっ! 俺は38だよ。44年生まれ』言ったら、目をむいて驚いたあと、『こりゃ先輩、失礼しました』『いえいえ、こちらこそ』

んで、また馬鹿笑い。

歓談後、気持ちよく手を振って夫婦とわかれ、走り出した俺の口元は、緩みっぱなしだった。朝からこんなステキな出会いがあるんだから、こりゃぁ、今日もかみ君、絶好調だぞ! などと心地よい朝の空気の中を、鼻歌交じりで走る。

 
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しばらく走ると、道が石畳になった。

へぇ、シャレてるなぁ、と感心しながら景色を楽しみつつ走り、浜坂あたりで国道178号を外れて、海沿いを走る。県道261から260号を繋いで、香住の方へ抜けようと考えたのだ。やはり、どうせ走るなら海沿いがいい。

んで、地図を確認しながら走り、260号へ入る。

と。

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県道を走っているつもりが、いつの間にか神社の前。

さすがに県道の前に鳥居はないだろう。いや、県道沿いってコトじゃなくて、交差点に鳥居が立ってるのである。交差点つーか神社の前にスペースがあり、そこからは頼りなげな細い道が出ているだけ。どうやら道を間違えたと、道を戻って逆に進む。

 

海沿いに走れば間違いないだろう。

左に海を見て走れば、大丈夫だ。

ん? コレが県道? いや、でもコレはもはや山陰のデフォルトだ。




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と思ったら、間違ってたし大丈夫じゃないしデフォルトじゃなかった。

どこで間違えたのかなァと引き返しながら検討してゆくと、どうやら大元の元が間違っていたようだ。いや、逆に言えば、間違ってなかったのだ。うん、ナニ言ってるかわからないと思うが、もう少し我慢して読め。つまり、上の方で鳥居の前にあった細い道。

アレが県道だったのである。

山陰の県道の基準を、ぜひとも教えていただきたい。切に。

 

ようやく国道178号へ戻り、そのまま東行。

目指すは、『城崎にて』で有名な、城崎(きのさき)温泉。熊本城前の写真『城前にて』は、つまりコレの前フリな。わかりづらいとか、つまらないとか、めんどくせぇとか、むしろ志賀直哉って誰だよとかオール却下。俺もめんどくせぇから。

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城崎の温泉街。

コレは鳥取側から来ると、かなり最後の方の風景だ。これ以前の写真も取れなくはなかったが、正直、俺には普通の温泉街にしか見えなかったので、かろうじて雰囲気のある写真だけ。ま、これもありそうっちゃ 『ありそうな画』なんだけど。

 

城崎はあまり面白くなかったので、城崎大橋からとっとと次へ……





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大橋?

 
気を取り直して城崎大橋を渡り、この位置から次に目指すのは当然。

日本三景の一つ、天橋立だ。

 

「国道312号は交通量が少ない」

という、ツーリングマップルの言葉を信じて走っていると、確かに交通量が少なく走りやすい。こうなると、丹後半島を回る178号は『走りにくい』と書いてあったのも、俄然、信憑性が出てくる。つーか、そうでも思わないと、丹後半島回るのを失念してたダメージがでかい。

も、天橋立まで、一直線に行くことしか考えてなかった。アタマ硬いよなぁ。

 



天橋立、南側に到着。

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ハーレーが一台停まってて、新潟から来たというその男と、しばらく話をする。

俺なんかまだまだ甘いなァと思うほど、その男は走り倒していて、リアタイアがまるで自動車のタイアのように平べったく削れていた。まぁ、俺は出来ればサイドもきちんと削りたいけどね。つか、写真撮り忘れたのが、ものすげぇ悔しい。

どうやら俺にも、軽く報道人魂が芽生えてきたようだ(むしろブロガー魂です)

 




ところで俺は、天橋立の景観について事前に調べていなかったので、それぞれの方向から見た景観にそれぞれ名前がついているとは知らなかった。知っていれば南からの眺め『飛龍観』や東からの『雪舟観』、西からの『一字観』も見てみただろう。

が、やはり有名な傘松公園からの『股のぞき』を見てみたい。

なので、最初は単車で北側に回ろうかと思ったのだが、ちょっと眺めるうちに、「向こう岸に渡す船があるんじゃないか?」と気づいちゃった 、天才的ひらめきの持ち主かみさん。

よし、ここはひとつ、キッチリ観光客に徹してやろう。

 

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知恵の輪。

三回くぐると文殊菩薩から知恵がさずかるというが、その性根といい、ゲタゲタ笑いながら集団でずらずら回る姿といい、知恵という言葉の持つ意味を、一滴(しずく)も理解していないように思える。文殊菩薩も原子炉の向こうで泣いてるね、きっと。


つづく

 
# by noreturnrydeen | 2007-07-20 00:07 | ソロツーリング
 
 
挑戦的な態度で、周りを見回すと。

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白兎地下道。

怪しい。すっかりさっぱり忘れてた、俺のUMAハンター魂が熱を帯びてくる。

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地下道へ入ってゆくと。


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天井にくもの巣が張っていて、怪しさは充分だ。

そのまま、進んでゆくと、あっさり海に出た。

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ま、つまり向こう側へ渡るための地下道なわけで、当然、見た瞬間からわかってたんだが、なんとなくネタっぽくしてみたところ失敗してしまったわけで、やはりナチュラルなネタには勝てないというか、もういいじゃないか流せよ。

 

んで、今度こそ砂丘を目指して走っていると、地図を確認した時に、面白そうな場所を見つける。

四国では、この手の寄り道で失敗したわけだが、ちっとも懲りてない。

むしろ拍車が掛かってる気がする。


んでまあ、四国は置いといて、面白いものというのが。

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これ。

砂丘の手前5kmくらいの所にある、湖山池の中の島。マップルに拠れば、このまん中の出島みたいな部分、『青島』に、どうやらキャンプ場があるらしい。となれば、今日の宿はもう、ココで決まりだろう。

ステキ企画に心躍らせながら、俺は、青島目指して走り出した。

県道190で折れ、同じく21号に乗る。


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青島到着。

この橋を渡って青島に入るのだが。

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ステキ企画、あえなく頓挫。

いや、荷物を担いで向こうへ渡れば、キャンプできないことはないのだが、大荷物かついで、こんなとてつもなく長い橋を渡る気力は、シラフの俺にはない。そしてなにより、千葉県北西部では有名な自然現象。

『かみは歩かない』

 

さて、どーすんべと地図を見ていると、近くに犬の散歩のヒトが来る。

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「キャンプ場探してるんですか?」

「ええ、そうなんですよ。ココ、ダメみたいですね」

「この近くなら、砂丘のそばにキャンプ場がありますよ」

確認してみれば、なるほど確かにある。俺は礼を言うとともに、彼の抱いていたワン公を褒める。もちろん、この人の写真を撮るための布石だ。 「かわいいねぇ」などとしばらくワン公に話しかけてから、彼に向かっておもむろに口を開く。

『写真撮らせてもらっていいですか?』

いや、かわいいと思うのはホントだけどね。

 

ようやく目的地へ向う決心のついた俺は、前輪を砂丘に向けた。

名所だけに、案内板が多い。その指図に従って走っていると、やがて『鳥取砂丘はこちら』の文字が見えてくる。しかし、今日はそっちに向えない。テントを張る時間が差し迫っているのだ。俺はキャンプ場に向かった。

と、キャンプ場への道を走ってる最中、右側が不意に開ける。

 
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砂丘だ。

一部しか見えないが、間違いなく砂丘だ。

思わず単車を停めて、写真を撮りながらしばし眺める。このまま見ていたら、いつまでも見てしまいそうなので、気を取り直してキャンプ場に向い、管理錬で受付を済ませた。つーか、このキャンプ場、無料だと。

 
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乗り入れはさすがに出来ないので、駐車場にM109Rを停めて。

入ってすぐのトコロに場所を定める。

急ぎ設営を済まし、カラ身になったM109Rに乗って、夕飯の買出し。

 
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間に合った。

 

今夜の食事は、サラダとワイン。

キャンプが続くと、肉や油よりも体が野菜を求めるようになる。ついでにハードリカーよりも、ワインとか身体に良さ気な酒を求めるようだ。ま、身体を気にするなら呑むなつー話なわけだが、知ったことか。

コンビニの兄ちゃんがハシを入れ忘れたので、自前のフォークで食べる。

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チタンフォークだぜーとか叫んでから、ドレッシングを買い忘れていることに気づいた。こっちはおにいちゃん関係なくて、明らかに俺のせい。だが、俺のこころは、そんなことでは折れない。なおかつ、ドレッシングを買いに行くなんて選択肢もない。

メンドウだから。

つわけで、かみ製スーパードレッシング。

 

 

 
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ノンオイルではないがノンフライだ。

どうよこのトンチ。

味? 聞くな。

 

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安ワインだが、テントで飲むと当然、うまい。

「砂丘で飲んでも、うまそうだなァ」

と思い、実行してやろうと思ってたんだが、ポテロングサラダが喰いづらくて、ブーブー文句言いながら喰って呑んでるうちに、いつの間にか忘れて寝てた。オノレのドタマの出来の悪さに、ホンキで悲しくなるね。

でも、砂見酒はいつか必ずやる。

 
つづく



 
# by noreturnrydeen | 2007-07-19 23:57 | ソロツーリング

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