なんとか凍死することもなく、無事に起きたら。
今日もひらひらふらふら、風まかせで走り出そう。
と、その前に、恒例の「朝スープ」を作ろうか。
真鍮製のトランギアは、
木のテーブル上だと、やたらカッコいい(・∀・)
んで、作った春雨スープをすすりながら、思い出した。
昨日のアレでフルードが微妙なだけに、ブレーキがちょっと不安なんだっけ。
じゃ、十和田湖一周しながら、なんとなく観光的な感じで行こうか?
つわけで走り出し、ふと気づいてビューエルさんを道っぱたに停める。
忘れてた。昨日の夜チェックしたら、もう、動画のSDカードが一杯だったんだ。
胸に付けてたビデオカメラを外し、代わりにカメラを今までより使いやすい首下げへ。
この位置だと、カメラのストラップが映り込んじゃうので、今までは横へよけてたのだ。
これから先はビデオ撮らないし、そのぶん、写真を頑張らないとなぁ、などと思いながら。
十和田湖畔を走り出す。
103~454と十和田湖の南岸を半周し、102号との交差点に来たところで。
観光案内を見つけ、「たまには
ツーリングマップル以外の地図も見てみるか」と停車する。
この交差点はスペースが広くなっていて、近くに展望台があった。
なのでまず先に、展望台へ登ってみる。
展望台の階段下にあった、天然記念物をしめす碑。
展望台からの風景。
朝もやがかかった湖は、昼間とは
違った風情があるね。
それからもどって、案内看板を見てみると、「虹の湖(にじのこ)」と書いてある。
なにそのドリーマーな名前。ちょっと見てみたいじゃん。
最初の行き先を、虹の湖に決めたら、102号を北西に向かう。
十和田湖の周辺は、基本的に
どこを走ってもワインディングという、スキモノにはたまらないステージだ。
まあ、だからこそ俺が「観光」なんて言えるんだけど。
やっぱ朝からワインディングって幸せだよねぇ(///∀///)
20キロ走るか走らないかくらいで、虹の湖に到着。
さっそく、ワクワクしながら単車を降りると。
あれ? なにをもって「虹」なんだろう?
どうにも、レインボー成分がひとかけらも感じられない。
ここはダム湖で、近代になってから命名されたらしいのだが、この時の俺は知らない。
「近くまで行けば、ニジるのかなぁ」
怪しげな自作動詞をつぶやきながら、湖畔へ近づくと。
この階段を
歩いて下れと? そしてまた
歩いて登ってこいと?
みなさんご存じ「かみは歩かない」ので、この画を見た瞬間、虹とかどうでもよくなる。
なので、階段の上からテキトーにパチリ。
う~ん、やっぱり
レインボーエッセンスは感じられないなぁ(´・ω・`)
微妙な虹の湖をあとに走り出してすぐ、国道394とぶつかったところで、東へ折れる。
ここまで来て、八甲田の山並みを走らない手はないからね。
ちなみに八甲田山は連山の総称で、単独の「八甲田山」って山はない。
偉そうに言ってるけど、前の東北ツーリングで知った知識だ。
八甲田の山々を左手に見ながら、国道394のワインディングを楽しむ。
と、城ヶ倉大橋を越えたところに展望所があったので、するっと入り込んだ。
ぽっかりと浮かぶ雲が、
どうにも夏でたまらない。
いま渡ってきた、城ヶ倉大橋。ダイナミックな景観だ。
もっとも俺には、そんな光景よりも、さらに気になってることがある。
何枚か写真を撮ると、愛機ユリシーズの元へ戻り。
ブレ―キャリパーの
フルード漏れをチェック。
どうやら増し締めが効いて、キャリパー周りは完全に乾いてるようだ。
よし、これならワインディングもダートもまだまだ行けるぞ!(学習しましょう)
休憩しながら地図を見てると、394で東に太平洋の近くまで出れば、小川原湖って湖がある。
十和田なみに大きい汽水湖なので、それじゃあそこへ向かうことにしようか。
ぱたんと地図を閉じてバッグに仕舞う。
気になってたブレーキも大丈夫だった。
ならば、走るだけだ。
これは石倉山あたりだろうか。
基本的に、それほど激しいツイストじゃないので、カーブひとつひとつをていねいに走ると楽しい。
つーか、こんな道で気合なんか入れたら、俺より先にビューエルさんが音を上げちゃうよ。
これはたぶん、八幡岳のふもとあたりのクソ峠。
楽しくすっ飛ばしてたら、菜の花だか何だか、黄色い花がきれいだったので、停まって撮ってみた。
俺にだって、花をめでる気持ちの一つや二つはあるんだぞ?
これは七戸(しちのへ)の手前あたりの田園風景。
急に目の前がどかんとひらけて、美しい田園が広がったので、感動したのだ。
いや、似たような風景はいいだけ見てるんだけどね。
なんど見てもやっぱり好きなんだよね、こういう画(・∀・)
七戸に入ったくらいで、見覚えのある名前の道を見つけた。
道の駅「しちのへ」は、前にも来たことがある、
馬の銅像が特徴的な駅だ。
なんだかんだ、単車乗りなら燃えるよね、
実物大の馬の像って。
なんなら腹にエンジン乗せて、動いてくれたらいいのにな。
いや、それでも俺はビューエルがいいけど(・∀・)
この銅像と反対側にある施設で、タミヤ模型のイベントだか展示会みたいのやってた。
10~20分くらい待てば見れるっぽいんだけど、言ってもそこまで興味ないのでスルー。
万が一、馬のプラモとかあったら買っちゃいそうだしwww
つわけで湖を目指す旅、続行。
ファイル末に置いてあるマップだと
変な風に走ってるけど、実際はひたすら394を東行してる。
地図を分ければちゃんと詳細に出せるんだけど、もうめんどーだから勘弁してね。
だいたいのルートは合ってるから、あとはほら、ノリで(意味が分かりません)。
やがて小川原湖畔へむかう案内表示が出たので、それに従って走る。
書いてある「湖水浴場」って言葉がなんか新鮮だった。
言われてみれば、そらそうなんだけど、湖水浴ってあんま使わないよね。そうでもない?
お墓まいりをしてる人々を横目に、いよいよ湖畔に到着。
小川原湖は十和田湖と変わらないサイズの汽水湖なので、さすがにでかい。
南北に長いので、東西の湖岸の距離が近いせいだろう。
対岸にきっちり陸地が見えるのも、なんかわくわくする。
気持ちいい景色と風にうれしくなって、湖を見ながらトコトコ走ってゆくと。
「おー! なんだここ! めっちゃ好きっ!」
湖畔のライン、緑のもりあがり、空の青さのすべてが完璧。
思わず停まって、ここで小休止を入れる。
風に吹かれながらタバコをくゆらし、湖面を眺めながら大きく伸びをする。
「きもちいー! まだ午前中かぁ、めちゃめちゃ悔しいなぁ」
要するにここで野宿したかったなぁ、と(・∀・)
風と景色を堪能したら、また湖畔に沿って走り出す。
ときどき、道がダートになってたりして。
今限定でダートに敏感な、かみさん46歳、そろ~りと走ってゆく。
もちろん心配なのは、コケることじゃなくて、振動で壊れること(´・ω・`)
小川原湖をあとにしたら、湖南を走る「青い森鉄道」に沿って走る。
三沢や八戸の市街地をぬけて、国道45号線にのったところで。
道の駅「はしかみ」で、小休止。
タバコをくわえながら地図を見て、県道42号から山の中へ行こうと決める。
と思ったら、その42号との分岐に軽トラがたくさん信号待ちしてた。
「あら、混んでるじゃん。せまいワインディングで抜くのめんどーだな」
ならば山をあきらめ、もう少し海沿いに走ってゆこうか。
どうしても暑かったら、その時また山へ行こう。
なんて思ってたらそうでもないので、そのままちんたら国道を走る。
まあ曲道はさんざん走ったし、今日はこんなんでもいいかな。
そういや、出がけに「観光」とか言ったしね、今さら思い出したけど。
海を見ながらのんびりドコドコ。
うっとうしいほどの渋滞もなく、平均60~80スピードくらいの流れなので、すり抜けもせず。
走りながら、いろいろなことを考える。
(このまま走ったら、三陸かぁ。そういえば三陸海岸は震災以降、走ってないんだよなぁ)
なんて思いながら久慈に入ったところで。
なんと! 「三船十段記念館」の文字を看板の中に見つける。
いや、そら行くでしょ、元柔道家としては(`・ω・´)。
案内看板がわかりづらかったので、携帯で検索しながら道をたどる。
もともと、明確な目的地をもって走るのは苦手なので、なかなか難儀した。
こういうときだけは、ナビゲーションが強いよね。
面白くないから、俺は使わないけど。
携帯に案内されて、どうにか三船十段記念館に到着。
国体の柔道、今回は久慈でやるのかな?
なんかそれっぽい横断幕が出てた。
最近の柔道のルール、イマイチわかんねぇから見てないんだけど。
三船十段の銅像。
自分の銅像って、うれしいものなんだろうか?
万が一俺が、日本のために偉業を成し遂げられたとして、銅像は断るだろうなぁ。
それか、めっちゃ美化してもらうかwww
中は基本、撮影禁止なので、ロビーで上映されてた動画と、等身大の写真。
動画の内容は、けっこうyou tubeなんかに流れてるやつ。
投げの形の「裏」なんかもやってて、興味深く見てしまった。
なんだかんだ、たっぷり一時間以上も見学し。
ようやく、記念館を後にする、30年前の柔道家。
う~む、帰ったら少し稽古しようかな、とこの時だけは思ったり。
記念館から、せっかくだから281号で山の方へ出ようと思ったんだが。
気付いたら反対向きに走って、海へ出ていた。
「まあ、風がこっちに行かせたんだろ。んじゃ、また海沿いを行くべ」
と、カッコつけた独り言をつぶやいて走り出す46歳。
ま、単車ってのは、自分に酔ってる方が楽しく乗れるからね。
海沿いの国道45号線をひたすら南下。
途中でバイパスつーか高速の無料区間も走ってみたり。
つっても一車線だし、こっちもそんなやる気ないから、ぶっ飛ばすわけじゃないんだけど。
と、「龍泉洞」の文字が現れる。
いつもの夏ツーリングなら、洞窟は涼しいから迷わず向かうところなんだが。
今夏はどうしたことか、下を走っててもまったく暑くない。
むしろ時々、寒ささえ感じるほどだ。
「龍泉洞かぁ、今寄ったら寒そうだなぁ。流れも良くて気持ちいいし、このままでいいか」
つわけで海を見ながら、考え事をしながら、ただ、漫然と走る。
宮古あたりを通りながら、「そろそろ寝るとこ探さねぇとな」と思いつつも。
なかなか山側に出るいい道に出会えず、なんとなく距離を重ねてゆく。
ま、釜石あたりから遠野へ向かって、最悪、遠野の道の駅にでも寝よう。
だいたいの方針が決まったので、心に余裕が出てくる。
なので途中、
陸中海岸の展望所なんかに入ってみたり。
ここだけで言えば、震災の影響はもう、まるっきり感じないといっていいかな。
もちろん、俺に見える範囲の話だけど。
ここへ来る間も、復興が進んでるところと、そうでないところの差があるなぁと感じた。
ただ、基本的にそれほど走ったことのある場所じゃないので、なんとなく他人事だった。
それが、山田あたりに差し掛かった時、一気に実感されるようになる。
知ってる道やその周りの施設が、まだ復興途中というか「仮」な姿。
M109Rで通ったときの店は、まだバラック的な建物のまま。
駐車場も土を盛り上げただけで、砂利さえ敷いてない。
「そうか、まだなのだな」と、すこし気持ちが沈む。
道の駅「山田」には、思い出がある。その時のレポートを引用してみよう。
知ってるヒトは知ってるだろうが、ツーリングマップル東北の65ページF-2、
この山田の少し先に、リアス式海岸を指して「まるで別世界に入り込んだよう」と書いてあるのだ。
そう言われれば、何が別世界なのか見てみたくなるだろう?」
こんな感じで興奮気味にここで休み、北海道から来た「日本一周中の若者たち」と出会う。
彼らは数日後、本当に俺の家まで顔を出してくれた。
そんなステキな思い出だ。
だが、今回はここじゃ寝ない。
当初の予定どおり、遠野まで足を伸ばしつつ。
途中で場所があればそこで野宿、なければ遠野で野宿だ。
山田を出たら少し南下し、遠野へ向かう県道35号線で西へ。
太陽はすっかり傾き、荷物の中からジャックダニエルが「休もうぜ」と語りかけてくる。
俺だって呑みたいんだ、もう少し待ってろよ!
道の駅で寝るなら暗くなってからの方がいいから、少なくとも35号は走り切るぞ。
そんな風に35号線のクソ峠をすっ飛ばしていると。
通りがかりに、えらく広いスペースを見つけたので、停まってUターン。
ずんずん入り込んでゆくと……
これは完璧だろ。ナイス野宿ポイント!(´▽`)
エンジンを切ると、水の流れる音が聞こえてくる。
そちらの方へ歩いてゆくマイトガイ。
お、これか。
涼しい林間の、水音が聞こえる野宿ポイントなんて、最高じゃないか。
つわけで、寝るのはここに決定し、早速、荷物をおろしてゆく。
椅子がテーブルじゃなく
バイクの方を向いてるのは、三日目なのでメンテナンスするため。
落ち着いたところで、携帯を取り出してみると、どうやら電波が届かない。
なのでSNSでの報告はあきらめ、まずは呑む前にメンテナンスをする。
排気デバイスのワイアがゆるんでたので、しっかりとネジを締め直し。
チェーンにオイルをさしてやったりと、メンテナンスしていると。
入口にクルマが止まって、中からおじさんが出てきた。
まっすぐこちらへ向かってくるので、「ありゃ、ここじゃ野宿できないのかな?」と思ってると。
おじさん、にっこり笑いかけてくる。
かみ 「こんばんはー! ここで泊まっちゃまずいですかね? 明日の朝早く出ますが」
おじ 「こんばんは。いや、ぜんぜん構わんよ。ただね……」
かみ 「はあ、なんでしょう」
おじ 「昨日、このへんにクマが出たんだ。だから気を付けてね。今、その警戒で回ってるんだ」
かみ 「は、はい……わ、わざわざ、ありがとうございます……」
とんでもない前フリをするなり、さっさと帰ってゆくおじさん。
その背中を写真に撮りながら、途方に暮れる、かみさん46歳。
気を付けろって、なにをどう気を付ければいいんだろう(´・ω・`)
「ま、とりあえず食い物とハミガキ粉は、オモテに出しておこう(水曜どうでしょうで得た知識)」
つわけで使う分のハミガキ粉と、数少ない食料を外に出す。
それから、しばらく考え込んで。
一応、クマに応戦する準備もしておこうかと、バッグの中を探り。
ナイフとハンドアックスを取り出してみる(`・ω・´)キリッ
昼間、柔道家としての刺激を受けてたから、ちょっとガッツが出たのかね。
間違いなく蟷螂の斧、焼け石に水なんだけどwww
準備が終わったところで、ちょっと背筋がゾクっとなった。
なんだ、武者震いか? と思いつつ、ため息を吐くと。
「あれ、タバコじゃねえぞこれ、息が白いじゃねぇか」
ゾクっは、クマと戦う決意からくるものじゃなくて、単に寒いだけだったようだ。
とまあ、切なさ全開の戦闘準備をしたら、あとはゆっくり呑むだけだ。
ジャックダニエルを薄い水割りにして、ちびちびやりながら徒然に。
今回のツーリングで得た、次回への教訓を振り返ってみる。
湯沸かしはアルストで済むから、ガスやガソリンストーブは要らないかな。
椅子もなくていいかな? もしくはサーマレストを座布団にする?
ラックは山賊だけにして、ソロの時はもう、本当にギリまで荷物を減らそうか。
そんな風に、単車のこと、旅のこと、道具のことなんかを考えつつ。
電波がつながらないから、SNSで友達とやり取りすることもなく。
ひとりっきり山の中で、穏やかな時間を過ごす。
あと一杯が終わらずに、延々と呑み続けた。
そんな、三日目の話。