榛名山賊宴会 ―御心(みこころ)のままに― (後編)
2014年 08月 31日
話は少しさかのぼって。
山賊の名物とも言える、ガッツリたっぷり、むちゃくちゃ美味しいeisukeさんの料理。
通称「クマめし」が、ついに出来上がった。
今回は「豚汁」で、もちろんeisuke流の具だくさん。
ニンニクをガッツリ炒めたところへ、豚肉や根菜類、油揚げや豆腐をぶちこんだ逸品だ。
この段階では、まだ出来たてで味が若いが、そのぶん野菜の歯ごたえがシャキシャキ美味しい。
「やべぇ、ウマい」と大騒ぎしながら食っていると、どうやら、ろろちゃんの方も出来上がったようだ
ご存知「ろろヤムクン」は、前回よりも「辛さを控え」て、より食べやすくなっている。
相変わらず見た目はアレだが、味のはいつもどおりの保障つき。
パスタとフライドポテトが汁のうまみを吸い、そこへ甘酢の肉団子がアクセントになっている。
旨い料理に舌鼓を打ち、腹がいっぱいになったところで。
のんびりと呑(や)りながら、焚き火台を引っ張り出して、組み立ててゆく。
それから、eisukeさんが用意してくれた小枝をくべて、軽い焚き火をはじめた。
太陽がだいぶん傾き、湖を渡ってくる風が冷たくなってきた。
俺はそんなでもなかったが、ろろちゃんとよしなしは「寒い」つって、上着を着始めている。
そしてもちろんeisukeさんは、アロハに短パンのまま笑ってる(・∀・)
と、小枝をカットするために用意された「電ノコ」をもって、先生が身構えた。
たぶん、「13日の金曜日」的なことを言いたいんだろうが、如何(いかん)せん、よしなし(´・ω・`)
緊張感のかけらもないその表情を、怖がれって方に無理がある。
それをツッコんだら、ろろちゃんと先生から「おめ、ホラー映画見れないだろ」と逆に突っ込まれた。
思えばこの辺からすでに、彼らふたりは「様子がおかしかった」ような気がする。
つっても今回、ふたりとも日本酒なんて「ほんの一口づつくらいしか飲んでない」はずなんだけどなぁ。
とにかく、この先ふたりは、いいだけ大暴れするんだが、それはまたあとで。
一方、しきはしきで、もちろん「大人しく」なんて、引っくり返ってもするわけがなく。
ストーブでウッドチップを燃やし、その火で肉を焼き。
焼きあがった肉をふうふうと冷ましたあと、口にくわえて娘(犬)たちに食べさせている。
「冷ましたあと、直接、手で食わせてやればいいじゃねぇか」と思ったら。
しき 「口移しであげると、俺も食った気になるから、ダイエットになるんですよ」
ならねぇよ(`・ω・´)
それぞれが好き勝手に、山賊スタイルで宴会を楽しんでいたら。
先のファイルで書いたように、榛名山を越えて黒い雲が流れ出してきた。
見る見る空を包んだ雲と同時に、榛名山名物の霧(きり)も湧き出してくる。
と、ぽつりぽつり、降り始めた。
まだ、大騒ぎするほどの雨じゃないが、このあとさらに強くなるのは、天気予報で確認済みだ。
少しだけ思案したあと、宴会場を移動することになった。
先ほどテントを張っていたとき、eisukeさんがブルーシートで宴会場を作ってくれていたのだ。
宴会場を移し終わるか終わらないうち、雨が突然、ホンゴシ入れて降り始めた。
持ち込んだ荷物が多くて、焚き木の一部が雨にさらされている。
なので、雨に強い「ネオプレンの上着」を着ていた俺が、eisukeさんとブルーシートの調整をした。
雨の中なので、なかなか思うように作業が進まず。
あれこれ試行錯誤しながら、どうにかいい感じでブルーシートを張り終わり。
終わったころには、すっかり酔いもさめてしまう。
それと同時に、雨が小降りになってきた。せっかくシート張ったのに(´・ω・`)
ところが、そんな俺とは反対に、いいだけ酔っ払ってる連中もいた。
「狂気の天才」ろろちゃんと、「暗黒の狩人」よしなしである。
睡眠不足とか、疲労とか、いろんな要因はあったんだろうが。
ここへ来て、ふたりが暴走し始めた。
雨にぬれて、さすがにちょっと寒さを感じた俺が、小枝を燃やして暖を取っていると。
煙が流れていった先で、ろろちゃんが「ケムいよ!」と文句を言い始める。
すると、その潮流(ビッグウエーブ)に、先生まで「ケムいー!」と乗っかってくる始末。
かみ 「うるせぇ、こっちは寒いんだ。煙かったら、移動しろぉ」
ろろ 「目が痛いんだよー! 謝罪と賠償を求める!」
よし 「寒いから、動きたくないんですよ」
かみ 「モンク言いながら、ちゃっかり暖とってるんじゃねぇwww」
さんざ文句言ってたくせに、そのうちデカい方の焚き火台で、火を燃そうとするふたり。
かみ 「そこで燃やしたら、上のブルーシートに火がつくって!」
ろろ 「マキじゃなくて、小枝を入れれば大丈夫だよ」
よし 「そうそう、高さが出ないように、広げて燃やせば大丈夫」
かみ 「ぜってー大丈夫じゃねぇよ! おめーらどんだけ酔っ払ってんだ」
しき 「すげぇ、かみさんが大人になってる」
かみ 「俺だって、なりたかねぇよ! くっそ、ふたりとも気持ちよく酔っ払いやがって」
結局、小さく焚き火をはじめたのだが。
すっかり出来上がってる連中だけに、だんだん、くべる枝の量がいい加減になってくる。
やがて、どう見ても「ブルーシートに届くサイズ」の炎が上がり始めた。
かみ 「あーも、しかたねぇ。焚き火台を引っ張って、外に持っていこう」
えい 「大丈夫かい、かみさん。こっちから押そうか? いや、押しちゃだめか、ぎゃははは!」
なんかおかしいな、と思ったら。
eisukeさんも日本酒をぐいぐい呑んで、いつのまにか出来上がってやがる。
俺の方は、ハンパに酒が抜けたところへ、先に酔われてしまい、すっかり機を逸した。
なんだろう、すげぇ悔しい(´・ω・`)
ところで。
もともと、8月にやるはずだった、今回の榛名山賊。
そのときには、三重のおーがも参戦するはずだった。
そこでeisukeさん、彼らしい気づかいで、おーがの娘のために、「おもちゃ」を用意してくれていた。
しかし、お盆の山賊は流れ、おもちゃだけが残ってしまう。
「使用期限」があるものだけに、来年までは持たないかもしれないから、今日、使ってしまおう。
そんな経緯でeisukeさんから、ろろちゃんにプレゼントされた、そのおもちゃ。
勝てねぇwwwwwwwwwwww
卑怯すぎて誰も勝てねぇよ、こんなもん。
表情から、シチュエイションから、後ろに映ったシルエットまで面白いんだから。
全員、ヒキツケを起こしかねないほど、盛大に爆笑する。
つーかろろちゃん、こうやって見ると、明らかに泥酔してるね。
そのあと、先生も挑戦してみたんだが。
いかんせん八の字。
ろろちゃんに比べると、どうしても、いまひとつパンチに欠ける。
まあ、先生も別に、勝ちたかねぇだろうけど。
あと、先生もやっぱり泥酔してる顔だね。
小降りになっていた雨が、どうやらいったん、完全にあがったようだ。
とは言え、榛名名物の霧は、さっきよりいっそう深くなってきた。
時々、通りがかる車も、みんな一様に速度を落とし、恐る恐る進んでいる。
明かりをバックに立つと、霧の中に「自分のシルエット」が浮かび上がる。
まるで山賊宴会・空島(スカイピア)編だ。
ときおり風が吹き、木々の葉に溜まった水を吹き飛ばすので。
雨は降ってないのに、ぱらぱらとブルーシートに水滴のあたる音がする。
時刻はまだ宵の口、ろろちゃんとよしなしは、絶好調に泥酔中。
左から、自作の甘い梅ワインで、すっかりほろ酔いのしき。
出来上がって絶好調の、ろろちゃんとよしなし。
そして、こちらも日本酒を呑んで一気にふたりへ追いついた、eisukeさん。
5人のうち3人が泥酔。
にも拘(かかわ)らず、そこに俺が入っていない。
ありえないよ(´・ω・`)
相変わらずアホほど濃い霧の中を、そろそろとクルマが一台、通り過ぎてゆく。
それを見たろろちゃん。
何の電波をキャッチしちゃったのか、いきなり大声で叫びだした。
ろろ 「みんな、次のクルマが来たら、火を囲んで両手を上に上げるんだ」
全員 「???」
ろろ 「手を上げて、『みーこころの、まーまーに』って大声で唱えるんだよ」
全員 「ぎゃははははは! 何の宗教だよ!」
言ってるそばから、霧の中を走ってくるクルマが一台。
ろろ 「ほら来たぞ! さあ! みーこころの、まーまーにー! はい!」
全員 「みーこころの、まーまーにー!」
ろろ 「みーこころの、まーまーにー!」
全員 「みーこころの、まーまーにー! ぎゃははははははっ!」
完ぺき、カオス状態(´・ω・`)
ろろちゃんがトイレに行くたび、緑に光るネコ耳がふわふわ踊り。
しきが、腹を抱えながら「今、ろろちゃんがどっち向いてるかすげぇわかるwww」と叫び。
全員、爆笑につぐ爆笑、ワルノリにつぐワルノリ。
こうなったら、もう、誰にも止められない。
普段なら、俺がやるはずの、派手な大きい焚き火。
今回は、泥酔した先生が、「その役」を買って出てくれた。
いや、ひとっつも頼んじゃいないんだけど。
天高く燃え上がる、豪快な炎。
そして、俺以外の誰も、この焚き火がデカ過ぎるって事に気づいてない。
みんなに追いつこうとガンガン酒を飲むんだが、どうにも焚き火が気になって酔えない。
かみ 「ちょ、まてお前ら! 炎がでかすぎる!」
よし 「大丈夫ですよ、ほら、あったかい」
かみ 「大丈夫じゃねぇよ、見てみろ、そこのブルーシート!」
わずかづつ、しかし確かに、ブルーシートが伸びてきている。
かみ 「あぶねーって! ブルーシート伸びてるって!」
ろろ 「本当だ、ぎゃはははは!」
えい 「まあ、これももう何年か使ったし、いいんじゃない?」
そういう問題じゃないですよeisukeさん(´・ω・`)
あと、写メ撮ってる場合じゃねぇです。
あなたの身長よりでかい炎が上がってますって!
炎が外にこぼれて、確実に「延焼モード」へ入ってますって!
いつも、みんなに迷惑かけてるぶんつーか、その報いつーか。
今日は独りでツッコみ続ける、シラフのマイトガイ。
異常に疲れ果て、10時を回るころにはぐったりとしてしまう。
結局、48時間寝てないしきが、テントにもぐったのと前後して。
また降り出した雨の中、俺も自分のテントにもぐりこんだ。
コットへ横になって、雨がテントに当たる音を聞いているうち。
ほとんど瞬殺で、眠りについたのだった。
開けて翌朝。
もやもやとハッキリしない天気ながら、どうやら雨は免(まぬが)れた、榛名湖畔。
昨日の狂乱がウソのように、おだやかなダメ人間ふたり。
「さぞかし二日酔いがつらいだろう」と、心配(期待)した俺は。
朝の挨拶をしてから、ふたりに聞いてみた。
かみ 「二日酔いはないかい?」
ろろ 「大丈夫だよ、するわけないじゃないか」
よし 「平気です、眠いけど」
それもそれで、なんか納得いかない(´・ω・`)
あっちゃこっちゃ濡れたモノを、乾かしたり、あきらめたりしながら、のんびりと撤収。
準備が整ったところで、みんなに声を掛けて。
「そんじゃ、また来月ー!」
ユリシーズにまたがると、霧の流れる朝の湖畔を、ゆっくりと走り出した。
せっかくだから、裏榛名とか周辺を走って行きたいところだが。
昼には神奈川からコジロウが、家族連れで遊びに来る予定なので、とっとと帰ることにする。
つわけで、せめて頭文字Dでおなじみ、「榛名の下り」を楽しもうじゃないか。
道はドライとハーフウエットが替わりばんこに出てくる、ちょっと走りづらいコンディション。
とは言え、「脳内ユーロビート」を聞きながら朝イチの峠道と来れば、やっぱりテンションは上がる。
荷物のおかげで、ちょいちょい車体を振られながら、着合い入れて下りを攻めるマイトガイ。
「行くぜ、五連ヘアピン! ……うっわ、俺、遅っせえwww ぎゃはははは!」
おっさんの叫び声が、朝の榛名にこだまする。
高速に乗って帰るか、それとも下道をゆくか、しばらく迷ったんだが。
休日の朝、しかも「上り方向」だしってことで、結局、下道で帰ることに決める。
17号を走ってると、昨日の宴会の様子が浮かんできて、くすりと思い出し笑い。
笑いながら、歌いながら、相棒ユリシーズと一緒に車列を縫いながら。
晴れやかな気分で、朝の国道を駆け抜けた。
榛名山賊宴会 ―御心(みこころ)のままに― /了