海で男は癒される
 


起きて朝食。

今回ストーブ(キャンプ用品の)の代わりに持って行った固形燃料は、フタが二重になっていて、『普通のフタをはずす小口径』と、『その周りのリング状のフタをはずす大口径』、二種類の火力調整がある……のだが。

よく見ると『小口径は保温用、大口径は調理用』となっている。

それを知らずに、ケチって長持ちする小口径でお湯を沸かそうとしたもんだから、いつまでも湯が沸かない。ブツブツ文句を言いながら、大口径に変えて、改めて炊飯。つーか、出発前によく確認しておけって話だ。


炊き上がって食ってみると、やはりこういうところで食うのはうまい。

だが、しょうゆが欲しいな。事前の準備のとき、

「しょうゆなんか要らねえか。俺は北欧の貴族だし」

と、軽く考えていたことを反省する貴族。今日の買出しで、早速買って来よう。

 

一服して海へ。
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きれいではあるが、この程度の透明度ではまだ、俺の目的『海の回廊』は良く見えないだろう。今日は回廊をあきらめて、遠出記録更新といくか。つわけで、今まで行ったことのない岩場を経由して、かなり沖のほうへ泳ぎだす。

と、途中で冷たく外向きに流れる海流にぶつかった

あわてて必死に泳ぎ、岩場へ戻る。冷や汗をかいた。

なるほど、みなこうやって遭難していくんだろうな。

気を引き締めよう(太字重要)。

 

すこし海岸に戻ると、そろそろ海水浴客が増えてきた。

若いねーちゃんが多くて、目の保養になる。引き締まったはずの心は一瞬にして融解。三分と持ちゃしねぇ。鼻の下を伸ばしながら、色とりどりの水着を着た女の子を、しばし鑑賞。黙って鑑賞してるだけでシアワセになれるんだから、女の子ってのは偉大だ。

ま、黙って鑑賞してても捕まる場合があるってのが、難点と言えば難点だが。



やがて女の子鑑賞にも飽きたので、も一度海へ入る。

クサフグやイソギンチャクを眺めながら漂っていると、イカが俺の目の前をよぎった。手のひらに乗るくらいの、小さなイカだ。ゆっくりと驚かさないように、そのあとを付回す。いや、付回したのはホントにイカだ。

鑑賞してた女の子では談じてない。本当だ。

追いかけてゆくと、だんだんと仲間と合流し始め、やがて彼らはいつのまにか大群になった。俺は海の中で目を見張りながらも、彼らと一緒になってゆっくりと泳ぐ。ジェット噴射を使わずに、よこっちょのヒレみたいなのでひらひら泳ぐその様は、優雅と言ってもいいだろう。

すると感動的なことに、彼らは俺も仲間に加えてくれた。

後ろについて泳いでいたはずが、いつの間にか取り囲まれ、仲間になって泳ぐ。

きもちいい。

 
 

岩場に上がると、ほかの客が「イカの大群だ」と騒ぎ出した。

俺は舌打ちし、網やモリでイカを取ろうとする連中の姿を、憮然とした表情で眺めていた。

やがて一匹のガキが、「パパぁ、イカとれたぁ?」とか、のん気な面で聞いている。俺は怒りと不安にいらだった。しかし、そのオヤジらしきすっとぼけたツラの貧弱な男が(ボロクソ言い過ぎです)、イカを逃がしたのだろう、肩をすくめて首を横に振った瞬間、思わずニヤリ。

どうやら俺の仲間は、難なく魔の手から逃れたようだ。

さすが、兄弟。

 
 
水シャワーを浴びて、買出しに行く。今回は、ビールとしょうゆ、それに魚介類にしよう。

イカが並べてあったが、兄弟を食うわけにはイカないので、えびを買って帰る。えびは炒めて、しょうゆで食ったがどうってことはなかった。昨日の残りの塩味の焼肉たれで食ったら、その方がうまかった。世の中、なかなか思い通りにはならないものである。

佐渡はごみの分別が甘く、金属以外は燃えるごみ指定なので、非常に助かる。


 
そろそろ日も落ちて、さて寝るかとテントに入ったら、ドンドコやかましい太鼓の男が聞こえてきた。

「ま~ったく、こんなところまで来て、音楽なんかかけなくてもいいだろうに」

と不機嫌な思いで寝ようとしていたら、どうも様子がおかしい。つーか、さっきまでラジオかなんかでかかってた、『夏で恋して愛ラヴュー』みたいなぬるい曲じゃなくて、どう聞いても和太鼓だ。漢と書いてオトコの音だ。「妙な趣味のヤツがいるな」と、ごそごそテントを出る。

と。

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鬼太鼓(おんでこ)だ。

もとは大陸からわたってきた獅子舞が変化したものだと言う、佐渡の名物、鬼太鼓踊りである。長髪の鬼の扮装をした男が、入れ替わり立ち代り、狂ったように踊るのだ。
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鬼気迫るその迫力に圧倒され、しばし魅入ってしまう。

 
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まさに狂踊。目の前すぐ、手が触れられそうな距離で、踊りまくるのだ。大迫力。

 
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今まで見た鬼太鼓の中でも、一番近くで見られ、一番迫力があった。

そのあと鬼が、ガキと並んで写真撮ってる風景も、そのギャップがおかしくて、
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小説のネタを考えながら、いつまでもその場を去らずに鬼を見ていた。


そんな、二日目の話。
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# by noreturnrydeen | 2006-08-14 21:32 | ソロツーリング | Trackback
男は北へ走り出す
 

今回のツーリング目的は、二つ。

第一の目的が休息。精神の徹底的な休息だ。俺の場合、肉体の方は設定価格がお安く出来てるので、基本的にちょっと休めば回復するが、精神の方はそうも行かない。その、気持ちの休みってやつを取りに行くのだ。

もうひとつはもちろん、旅。

ひごろ時間的制約で行くことの出来ない遠くへ、いけるだけ行ってみようと思ってる。もちろん、行く気がなくなれば、その場にキャンプすればいい。何の制約もなく行動すると言うのが、とにかく大切なのだ。

てなわけで、出発しようか。

 


土曜日の夜。

準備を終えた俺は、意気揚々と柏を出発した。

と、真夏の夜なのに、神様も俺の出発を気づかったのだろうか、やけに涼しい立ち上がりを用意してくれた。平たく言うと寒い。タンクトップつーアッタマ悪いカッコで乗ってた俺は、給油ついでに革ジャンを着込む。
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三郷から外環に乗り、走り出すとずぐ、革ジャン効果の高さを思い知る。

つーか、夏の夜のツーリングのときはいつも、出るときは「今回はやっぱ要らないかな」と考えるのに、もって出て高速に乗った瞬間、「やっぱり、あってよかった」と安堵するんだよな。


さて今回はいつもと違って、休息とか旅とか、わりと生ぬるいテーマだ。

ここで目を三角にして走るのは馬鹿げてる。

100~120くらいで流して走ると、これはこれで存外気持ちいい。無目的、と言うのが効いてるのかも知れない。どれだけ時間がかかろうが、眠くなればパーキングに寝て、起きたらその日の気分で走ればいいのだから、やはりたまらなく楽しい。

とりあえず、最初になんとなく定めた、新潟から日本海という流れに沿って、新潟を目指す。

 


赤城あたりで霧が出て、とたんに寒くなってくる。

が、もともと毎年行ってた佐渡島行きのツーリングでよく知ってるので、寒さに驚くこともなく順調に距離を重ねる。革ジャン様様。赤城の先から、越後川口あたりまで、どのPAに立ち寄っても給油の列が出来ていた。

今年はやけに関越が人気だなと思ったら、PAのスタンドの兄ちゃん、

「TVで、高速のスタンドは、値上がりするまでにタイムラグがあるって番組をやったんです。そしたら給油に来る車の数が、いつもの四倍ですよ。でも、満タンのお客さんは少ないんですけど」

と、悲鳴をあげていた。

 
 

走り出し、しばらくして決心が付つく。

やっぱ、佐渡へいこう。

新潟で降りて、フェリー乗り場に行くと、さすがにシーズンで、キャンセル待ちだという。もちろん、そのまま待っても良かったんだが、受付のかわいいお姉ちゃん(推定年齢:俺の母親とタメ)が

直江津の方なら、あったかもしれないんだけどね」

ん? なに?

俺に対する挑戦かそれは?(親切な意見です)

 
 

俺はくるりときびすを返すと、高速に乗りなおし、直江津港を目指して走り出す。

こういうことが出来るから、時間のある旅は楽しい。ちなみに、いつも使ってた赤泊→寺泊線は、いつの間にか廃止になってた。一年行かないだけで、ずいぶんと様変わりするもんだ。場末の飲み屋みたいな恒久性はないらしい。

100キロほど走って、直江津港に到着。
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やはり、うら寂しい感じの日本海。

 
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フェリー待ちのRocketIII。

 

直江津港でフェリーを待っていると、
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ZZR1200に乗ったおっちゃん、いや、兄ちゃん? まあいいや。とにかく俺と同い年くらいの人に会った。なんかテンション高めで変な男だったが、俺もいいかげん元気だったから、向こうも同じように思っているかもしれない。

 
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RocketIIIの話をちょっとしたが、それほどうるさい話にならなかったのは良かった。石川県から来た彼も、俺と同じく佐渡に取り付かれたクチで、延々佐渡の話をしてから、行ったことあります? と聞くので9回目だといったら、目を丸くしてた。

フェリーに乗ったところで、缶ビールを一本、うん、嘘ついた。二本買ってくる。

直江津→小木航路は二時間半かかるので、寝入りには、このくらいがちょうどいい。

ZZRの兄ちゃんは、ほかの「ライダー」を集めて講釈してた。

俺は知ってる話ばっかりだったので、さくっと寝た。

 



佐渡に到着。

小木港から、外海府ルートで入崎を目指す。

入崎にはここ数年、必ず使ってるキャンプ場がある。休息目的なので、サバイバルっぽい雰囲気よりも、自宅の延長のカンジが欲しかったのだ。相川を越え、尖閣湾を越えて、タンポポ畑を横目に眺めながら、海沿いの道を走る。

ああ、家に帰ってきた気分だ。


と。


その家に突然、知らない家具が置かれてた

正確には家具じゃなくて道。ずっと一番の難所になっていた険しく細い道がなくなり、代わりにでかいトンネルが出来ているのだ。対面通行ぎりぎりで、譲り合いの精神を大きく育んでいたその細道は、跡形もなく消えている。

「あのしょぼい道と、小さな洞窟みたいなトンネルが、こんなに大きく育ったか」

久しぶりに帰ったら息子が成人してました的な、放蕩オヤジっぽい感慨にふけりつつ、俺はトンネルの中に入った。とたんに襲ってくる、驚くほどの冷気。『これは間違いなくUMAがいるぞ』と俺様の感性が、ビリビリと危険信号を伝えてきた。

UMAハンター(実績なし)であり、人々にUMA人(ゆまんちゅ)と恐れられる俺の感性に。

何もなかったけど。

すげえ使えない感性。



このトンネルの涼しさは、しかし、尋常じゃない。

日陰に入ってああ涼しいとか、地下水が染み出しててかなり涼しいとかのレヴェルじゃないのだ。むしろ極寒。『冷房中』の札を出しておくべきだ。トンネルを出るころは、エンジン以外の金属製品が、軒並み冷たくなってたほどなのである。

熱くてグローブをはずしてたから、たまたま気づいたのだが、ブレーキレバーが冷たくなったのには、マジで度肝を抜かれた。熱中症が持病のダチのZなら間違いなく、あの中にテントを張るだろう。もちろん、俺も張りたいと思った。

ガマンしたけど。

 


入崎に到着し、そのテントをトンネルではなく、海岸沿いの土手に張る。
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雨なんか降るわけないので、グランドシートは省略。

 
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ポールを組んで、テントを吊り。

 
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フライシートをかけて完成。

仮の我が家が出来たところで、水シャワーを浴びて熱気を冷ました。

ここは温水シャワーは有料だが、水シャワーは無料なので、俺は一日に何度も入ることが多い。

 
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そのまま、テントを張った場所にある木製のベンチで昼寝。

 

昼過ぎころ目を覚ますと、風が強くなっていた。

当然、海は荒れている。すぐに入りたかったが、せっかくだから凪の綺麗な時に入ろうと、先に単車で走ることにした。入崎からわずか数分のところに、ドンデン峠への入り口がある。前回の四国行きで患った『ガケ恐怖症』のリハビリ第一弾だ。

入るとすぐに、四国の山中を髣髴とさせる、舗装林道フレーバな峠道が続く。

ガケの恐怖と戦いながら、慎重に、でも楽しんで走った。山頂の、佐渡を一望できる展望台に、フェリーで会ったZZRの男がいる。聞くと彼は、暑さをしのいでドンデン山にキャンプするそうだ。海辺の俺が吉と出るか、山の彼が吉と出るか。



ドンデンを越え、両津に入ってそこで買い物をする。

そのまま取って返し、入崎に戻ると少し涼しかった。

こりゃあ、俺の方が吉と出たかな?

テントを張って荷物を降ろし、ベースキャンプにする走り方は、いままであまりしたことがなかったが、意識してやってみると、面白い。提案してくれたZに感謝だ。

 

少しテントで休んでから、今度は近くのJAに夕食の買出し。

ビール350×6のパックをふたつ。.あと、肉とさば缶。さば缶は安売りしてたので、思わず買ってしまった。まあ、空き缶がちょうどいい灰皿になるだろう。
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ぐいぐいとビールを飲んで、肉とさばを食って寝る……ハズが、虫に食われて目が覚めた。

せっかく虫除けを持っていったのに、間抜けな話だ。

あわてて起きると、虫除けを塗る。


と、月が煌々と明るい。


ペットボトルに朝飯用の水を汲んで、タバコを一本つけ、一服しながら夜の海と月を交互に眺める。ああ、また佐渡に来たんだな。感傷的になってからテントに入ろうとして、入り口の前で待ち構えていた、でかいフナムシをぶっ飛ばし、こんどこそ幸せな眠りに付いた。

風が涼しい、最初の夜の話。


 
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# by noreturnrydeen | 2006-08-12 21:13 | ソロツーリング | Trackback

つわけで、突然決まった5thちっちゃいもん倶楽部、やってきた。

とにかく今回、心の底から思い知らされた重要な教訓は、昼下がりってなイチバン暑い時間にバイクに乗るなんてバカのやることだってコト。つーか、晴れ男ぶりも大概にしておけって話だ。誰が晴れ男だ雨男だなんてわからんが、俺の一存で、マルのせい。

 

仕事が終わり、SDRにまたがって筑波を目指す。

ポジションがポジションだけに、向こうに行くまではシンドイかと思ったが、SDRのハンドルは低いけど近いので、それほど苦行でもなかった。むしろすり抜けしやすいから、RIIIなんかよりもつらくないかも。一時間足らずで、筑波のふもと、いつものコンビニに着く。

すると、CBRがぽつんととまっている。もちろん栃木のバカ大将、マルゾーだ。

「来られない」とか何とか言ってたくせに、速攻一番乗り。

相変わらず、わかりやすい男 ではある。

 

「んだおめ、来ないんじゃなかったのか?」

「うるせー。それよりZから連絡があった」

「ん? なんだって?」

なんかマダラで休んで来るってよ



キサマは俺とコミュニケートする気があるのか?

バカを尋問して、なんとか事の顛末を語らせる。要は、最近、汗がかけずに体温調節できないZが、「走っているうち熱気にやられて、マダラ模様に顔が赤くなるほど身体に熱がこもってしまった。途中のコンビニで休んでから来る」って話だったわけなのだが。

どんだけ自分勝手な翻訳だ。

マルと一服しながら待ってると、5分かそこらでZが到着。
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今回のZは、代車のKSR80だ。

風返しなら、クソマルのブラバより強敵かもしれない。なんて思ってたら、マルの野郎が嬉しそうな顔で俺に説明を始めた。内容はもちろんCBRのカスタム。スクリーンに、バックステップ。 色々と買ってるようだが、この辺は聞いただけムカつくので聞き流す。

が、ちっと反応してしまったのが、前後のタイア。

小僧時代の夢のブランド、ミシュランを履いてやがったのだ。ま、今なら「コストと性能とライフのバランスが取れてるね」みたいに思えるはずなのに、昔取った杵柄……じゃねーや。三つ子の魂百まで 、つーのかな?

俺はミシュランって聞いただけで、イロイロと熱い思いこみ上げてくる。

 


一服して、さて、それじゃあ走ろうか。

まずは、いつもの風返し峠まで、元気よく登っていくと、てっぺんで工事してる。誘導の警備員さんに「どっちへ行きます?」言われて、「あっち」と風返しを指しながら即答。信号が青になると同時に、そのまま風返しへ入る。 すると後ろから別の警備員さんが

「行かせちゃだめだ、そっちは二輪禁止だから」

みたいなワケのわからないことを叫んでいたが、もちろんフルシカト。

俺ら六輪なのに、ナニ言ってるんだろうね?

まぁ、六輪車と二輪車の区別もつかない可哀想な警備員の話はおいといて、実は、SDRで風返しを走るのは初めてな俺。かなり期待と不安の入り混じった状態で走り出すと、最初の直線を景気よく下り、フロントブレーキをナメながら左コーナーにカットイン。


すいっ、

くくくっ、

ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!

 

気ン持ちいいー!

 

そりゃ頭ではわかってたけど、これほどSDRにベストマッチの峠を走ったことはない。いままで地獄の釜のフタにしか見えなかったコーナ-が、きれいなおねえちゃんに見える。そんくらいSDRと風返しは、パーフェクトミラクルフィット。

オーダーメードみたい。



二本ほど走って、休憩ゾーンでZが「じゃあ、スカイライン行きますか」言ったときも、「俺、もう少しココで走りたいな」思ったくらい。ま、スカイライン走ってから、もう一回来ればいいやと思いつつ風返しを出 て、そのまま左折すれば、筑波表スカイラインの入り口だ。

俺らは6輪車で来てるからいいけど、一般的には二輪通行禁止のワインディングである。

ついこの間まで有料だったのが、最近無料になった。

初めての道にはちっと弱めのマルを先頭に、俺、Zの順で走り出す。Zいわく、CBRにはもってこいの道らしいので、どうせ途中で離されるんだろうからと、こういう順番で走り出したのだ。Zは俺より速いんだがマシンが80ccだから、さすがにSDRに追いつかれることはないだろうってことで、最後尾。

んで、走ってみたわけだが。

 

や、すげえよこの道。

赤城が直線とタイトコーナーに分かれたステージだとすると、ここはそれが混在するカンジ。もちろん直線も何ヶ所かあるけど、基本的にはタイトコーナーを中低速コーナーでつないだってカンジの、かなり面白いステージだ。いい意味でメリハリがないつーのかな。

こんなに近所に住んでて、なんてもったいない事をしてたんだろう。

ここならRocketIIIでもSDRでもすげえ楽しく走れる。今回は夏真っ盛りのせいで、左コーナの雑草ブラインドが多かったけど、これが枯れたらさらに走りやすいんじゃないかな。風返しはSDR専用みたいな顔だったけど、スカイラインはかなり懐の深い顔を持ってる。

ま、マルは赤城のが走りやすいって言ってたけど。

俺はとにかく、離されることもなく、マルのCBRについていけたのが嬉しかった。

マルゾーが慣れてくれば、すぐに置いて行かれちゃうんだろうけど。

 
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最後まで走って、Uターンし、休憩所に入る。

 
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筑波山麓の眺望がいい。

 
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が、いかんせん暑すぎる。

「んじゃ、登って、山頂付近の駐車場にいくべ」

と走り出した。マルゾーが、

「ダレか俺にちっちゃいの貸せ」

言うので、俺とマシンを取り替えて、Zの乗ったKSRを追っかけるカタチ。

つーか、乗るたびに思うんだが、CBRのブレーキすげえな。VTXも同じブレーキをつけてて(DCBSはないけど)俺はその制動力に参った結果、ブレーキングに関してフォワコン至上主義になったわけだけど、改めてこのマスター&キャリパーの組み合わせのすばらしさを実感した。

 


しばらく走ると、道端にKSRを停めたZが、手を振って俺らを停める。

「どした?」

「今、パトカーが走っていきました」

別に6輪だからパトカーなんて怖くないのだが、俺もマルもZも、彼らがあまり好きではないので、それじゃあと横道に入る。マルと単車を取り替えなおしたら、こんどはKSR、SDR、CBRの順番で並んで走り出した。これももちろん、ある意味速い順。

この横道ってのが、ガレ、山汁、いわゆる林道に近い荒道なのだ。

KSRはもってこいだが、SDRやCBRにはちとシンドイはずだから、この順番で走り出した。

ところが……や、SDR、やっぱ最強だね。ほとんどKSRに離されることなく、イイペースで林道を下れた。リアブレーキのみ使用で、リーンアウト基本で走ると、意外や意外。 コケの生えた山道も、結構、なんとかなる。なるどころか、かなり問題なく、場合によってはKSRに詰め寄るほど。

もちろんこの間、マルゾー&CBRは、はるか後方。

むしろ宇宙の彼方。

 

 

んで。

ヤル気マンマンで走ってた俺らも、林道下って国道125号に出たところで、このキチガイじみた暑さに、耐えられなくなってきた。ただ暑いならともかく、直射日光が痛いんだから、単車なんか乗ってる場合じゃない。どっかで茶でも飲もうかって話にな った。

しばらく125号を西行し、294号を越えて少し行ったところにあるマックで休憩。

ビールのある店じゃなくて良かった。

あれば間違いなく飲んでたね、俺。



マックでZが身体を冷やし、俺とマルは軽く飯を食う。

そのままくつろぎながら、しばらくダベったあと、マルが早く帰らなきゃならんと言うことでここでお別れ。第五回ちっちゃいもん倶楽部は、クソ暑いさなかだったので、いつもより控えめの走りで、幕を閉じた。

帰り道、Zとふたり294号を南下しながら見た風景がなんだかやけに気持ちよかった。もう少し、視界をふさぐ背の高い雑草がなくて、だだっ広い田園地帯をまっすぐ走るカンジが実感できたら、もっと良かったのにな。

 

マルに借りて乗ったCBRも、Zに借りた(Zンじゃないけど)KSRも、もちろん俺のSDRも。どの単車も、その単車なりの面白さを持ってるし、その単車なりの味わいがある。それを乗り比べるときの幸せを、こんなに強烈に感じるのは、俺だけかな?

帰ってきても、CBRのブレーキだ、KSRのポジションだ、てめえのSDRの弱点や長所。

イロイロ思い出して、やけにテンションが上がってる。

もちろん、ご機嫌なイキオイで、酒も飲んでる。

 

あのさ。

 

単車って、なんでこんなにステキなんだろうな?

 
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# by noreturnrydeen | 2006-07-26 21:28 | ちっちゃいもん倶楽部 | Trackback

そして、伝説へ 2/2

 

カルストまであと少しってところで、地図を確認した俺の目に。

地図の東側、カルストと反対のところにあった、ある文字が飛び込んできた。

その文字とは、天狗高原



思い出して欲しい。

俺のもうひとつの目的に、UMA捕獲があったことを。

ここまであまりにも順調に走ってこれたことに気を良くした俺は、



「んだよ、天狗捕まえちゃうか?」



などと、少々テンションの上がった頭で考えていた。

その上、どうやらその先には、四万十の源流があるらしい。



「ま、天狗はギャグにしても、源流は見てみたい」



そう考えたとして、誰が責められよう。

俺はカルストと反対に曲がり、天狗と源流を求めて走り出した。



 
 

しばらく走るうち、なにやらだんだん道が細くなってくる。

「う~む、こりゃあかなりヘンピなとこだな。さすが源流。いや、天狗」

ハイテンションな独り言をわめきたてつつ、俺はひたすら山の上を目指して走った。



道はだんだん細くなり、ガレてきて、なにやらチョロチョロと水まで流れ出している。

源流とかなんとか言うよりも、フツーに道幅がヤバくなってきた。



「ありゃ、こりゃさすがに無理か。仕方ない、戻ろう」



今回はじめてのUターンだ。






左側にかなり水が流れていて、道に穴が開いている。

正直、300キロを超えるクソ重たいクルーザで来るところでは、断じてない

オフ車ならともかく。



「調子に乗りすぎたなぁ」



と反省しながら、俺は穴と水を避けて道の右端にRIIIをとめ、タバコに火をつけた。




う~ん、静かで気持ちいいっ!

 
 


と。



 


ぐらり。

 




え?

 

 


強固なはずの大地が、RIIIのフロントを飲み込もうとする。

昨日までの雨で、地盤が緩んでいたのだ。



俺はあわててRIIIにまたがり、車体を支えた。

チカラ入れすぎて筋肉の切れる音が聞こえたかなってくらい、気合入れて支えた。

だが、乾燥320キロの車重は、俺の豪腕(?)も支えきれない。




やがて……




ぱたん。



無常にも立ちゴケるロケットスリー。



「あ~あ、やっちまった。クソ重たいの起こすのヤだなぁ」



へこんでいると。

 

ぐら……

 

倒れた車体が、さらに傾き始める。

 

「え? ちょ、まてまてまてまてまて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
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……ありえねぇ…………

 

延々のぼってきたひと気のまったくない林道で、これほど見たくない光景があるだろうか? 

車体が完全に腹を見せてる絵は、目に見えてはいても、頭の中でうまく認識できない

ちなみにこの下は、かなり切り立ったガケが6メータほど。

 


ありえなさがUMAの比ではない光景に、呆然とたたずむこと、数秒。



スクワットレッグプレスで200近く上げられるし、下から押し上げればもしかしたら」

考えた俺は、とりあえずこの光景を写真に撮る。

それから、今になって考えればアホほど無謀な話だが、車体を下から押し上げようと試みた。



足場を作り、踏ん張って、えいとばかりに持ち上げる。

車体はぐらりと動き、いくらか起き上がりそうになる。

「お、イケるか?」と思った、次の瞬間。

 

ごろん。

  

「……!」


 
ごろん、ごろん、ごろん。



転がり落ちてくる車体の下敷きにならないよう逃げつつ。

恋人に追いすがる演歌歌手さながらに、片手を伸ばして、声にならない叫びを上げる俺。

その目の前を、無情にも転がり落ちてゆく愛機
 

 

 

 

 

 

 
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4メータほど転げ落ち、崖の中腹で止まった。


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ヒグラシの声。

せせらぎの音。

痛いほどの静寂。

 

 


五分ほど、そうしてたたずんでいただろうか。

やがて俺は、恐ろしいことに思い当たる。



携帯はまるっきし圏外

時刻は陽が長い南国とはいえ、あまり余裕のある時刻とはお世辞にも言えない、夕方の四時

その上、イッコも人気(ひとけ)のない寂れた林道。

300キログラム以上もある、崖の下に転がり落ちた単車。



そう。



単車もヤバイが、俺の状況はもっとヤバイのだ。

 




とりあえずRIIIから荷物を降ろし。

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最小限の荷物を持って、林道を下り始める。



時々携帯のアンテナを確認しながら、下ること数十分。

なんとかアンテナの立ったところで、警察に電話する。

そこからたらい回しにされ、ようやく地元の駐在さんと連絡が取れた。



が、場所がイマイチ把握できないようだ。



仕方ないので、場所の特定ができそうなところまで、また下る。






やがて県道の看板が出てきたので、その旨告げようと電話を取り出すが、また圏外。

アンテナの立つところまで行き電話するも、つながった瞬間にアンテナが立たなくなる。

ブツブツと切れ切れで、まともに会話できない。



しばらくしてあきらめた俺は、林道を下りだした。

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途中、地元のヒトが使うのだろう、ショートカットを見つけ、まったく人気のない道を、延々と下る。

余計なことを考えると、いろいろとやる気が削がれるので、心を無にして、ひたすら淡々と。

正確には、「次の単車、なに買おう」とか現実逃避しながら下る。



後で調べたところ、結局、林道を13キロほど下ったようだ。

時間にして約二時間、歩き詰めである。

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ま、こんなところに落ちてたら死んでるわけで、命があっただけマシか。


 

暑さ、疲労、あせりが、俺の体力をガンガン奪ってゆく。



心身ともボロボロになりながら、ようやくふもとまでたどり着き。

そこにあった食料品屋で電話を借り、先ほどの駐在さんに電話した。

二十分ほどしてパトカーが到着



冷房の効いた車内で、俺はようやく安堵のため息をついた。






駐在さんに事情を話しながら、今来た道をまた登る。

なお、以下の土佐弁はうろ覚えの記憶で再現しているので、正確さは期待しないよう。

 

「こがぁなところ、地元でもこんがよ。怪我してたら白骨じゃったの」



シャレにならない話を聞きながら、墜落現場まで行く。

残った荷物をパトカーに積んで、山を下りながら彼と話した。

どうやらこの時間ですでに、電車もバスも動いてないらしい。



落胆しつつしばらく話すうち、なにやら俺の体育会系のノリを気に入ってくれたらしい駐在さん。



「バイクはひとまずこのままにして、高知空港までタクシーで行く」



という俺に「金がかかりすぎる」と叫ぶと、携帯を取り出す。

やがて、電話を切った駐在さんは笑いながら、

「ワシの知り合いの民宿に泊まれ」と言い出した。



俺は感謝しつつ、彼の言に従った。

 
 



民宿は、温泉が家風呂ほどの大きさの、寂れた雰囲気の場所だった。

四万十の鮎釣り客用の民宿らしい。

ただ、あとで調べたら、かなり有名な宿ではあるようだ。



釣り人の間ではの限定つきながら。

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最初は素泊まりだと言われ、コンビニでにぎり飯とビールを買っていった。

だが、到着してみれば、そこの主人が晩飯の用意をしてくれていた。

そして駐在さんと俺、主人の三人で、酒を飲み始めた。






飲みながら話していると、主人が突然、にやりと笑う。



「やっぱり、柔道をやっていたヤツは、一本筋が通っちょるの」

「なはは、ありがとうございます」

「おまん、バイクをぼてコカしたちゅうたな? なら、ちくと待っとれ」

「え……あ……いや……」



言うが早いか、携帯を取り出して、電話している。

「ああ、ワカ? あんな、今ウチに、バイクぼてコカした男がきとるんじゃ」

なにやら、やたら楽しそうに話す主人。



「バイク乗りのよしみで助けてやって欲しいがよ。気持ちのいい男じゃき、ワカも気に入るはずじゃ」



俺は、誰かのために自分が動くのは苦にしない

だが、誰かが俺のために苦労するのが、とても苦手だ。

だから、ありがたいの半分、申し訳なくて放っておいて欲しいの半分と言った気持ちだった。



で、その「ワカ」と言うヒトを待っってると。

やってきたのは俺のイッコ上の、建設会社の若社長。

だから、「ワカ」なのだ。



ZRX1200を駆るというその人は、俺の顔を見るなりニヤリと笑うと、

「任せとけ」

そして、そのまま宴会。


 



ここには、俺がたくさんいる。

傲慢な言い草かもしれないが、俺はそんな風に感じた。

俺がこうありたいと思う「気持ちのいい男」を、みなが当たり前のように体現しているのだ。

一緒に酒を飲み、バカ話に興じ、笑いあい。



俺はもう、どうにもたまらなく、この町が好きになってしまった。



この町の人々は、飲んだくれでお人よしだ。

そして、町の行く末を案じ、みなが自分のやり方で町のために何かしようとがんばっている。



主人は釣りで、若社長はバイクを通じて。

そして駐在さんは俺みたいなメイワクモノにさえ、厚い人情で接してくれることで。

すこしでも町を活性化しようと、がんばっているのだ。



「町のために」何ができるか

飲みながら、そんな話を当たり前のように語り合う彼らの言葉を聞きつつ。

俺は自分が少し恥ずかしくなった。

 


 


明けて翌日の月曜日。

朝起きると、すでに来てくれていた若社長らとともに、墜落現場へ向かう。



現場に行くと、非番だと言う駐在さんまで顔を出していた。

昨日初めて会った俺を心配して、休日返上で付き合ってくれるつーのだ。

お人よしを通り越して神々しい。






それはともかく、さぁ、RIIIの引き上げだ。

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手前のジャージのヒトが、お世話になった駐在さん。


 
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ワイヤを引っ掛けて、ユニックのクレーンでRIIIを吊り上げる。


 
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ウインチがうなると、RIIIが動き出す。


 
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宙を舞うROCKETIII。

「フロントに引っ掛けてコレだけバランスするんだから、やっぱRIIIってエンジンが重たいんだなぁ」

と、俺は妙な感心をしながら、作業を見守った。



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上がったRIIIは、ハデに転がった割には軽傷だった。

ハンドルがひん曲がっているのと、タンクがへこんでいるくらいが、主だった傷だ。

ビートルバッグも、細かい傷以外は無事。不幸中の幸い。



思ったより軽傷そうなのは、やわらかい土の上を転がったからだろうか。

いや、俺の普段の行ないがいいからだな、きっと。



RIIIはこのまま町に下り、レッドバロン高知店が引き取りに来た。

二週間後には柏店に帰って来るそうで、そこで調べてから今後どうなるかが決まる。

もしかしたら再起不能になる可能性もあるのだが、ま、そのときはそのときだ。



 


結局、三大カルスト制覇どころか、ひとつも行けずに終わったツーリングだった。

だが、四国での出会いは、その悔しさをずいぶんとやわらげてくれた。

通り過ぎるだけだったハズが、気持ちのいい男たちと杯を交えられた。

すばらしい思い出になった。



いや、負け惜しみじゃなく、ね。





 
なお、このあと、ただ帰るのは癪なので、高知竜馬空港から九州へ飛んだ。

そして韓国から帰ってきたダチのZRZと合流。

Zの運転するレンタカーで、のんびりと阿蘇めぐりして来た。

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もちろん、次回のための偵察だ。

 
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この光景を、単車の背で眺めたかった。

 
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ダイナミックな阿蘇の風景を眺めつつ、俺は決心を新たにする。

 

「かならず、ここを走ってやる」

 

懲りてないって?

 

あたりまえだ。

 

俺は死ぬまで、単車乗りなのだよ。

 

 『そして、伝説へ』 ―了―

 
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# by noreturnrydeen | 2006-07-15 12:53 | ソロツーリング | Trackback

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