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(前編はこちら)


「広れぇ! きれいー! 気持ちいいー!」



伊勢湾岸に入るなり、俺はメットの中で吼えた。

一車線がだだっ広いのに、それが三車線。

そして、ガラガラなのだ。


地元のおーがに言わせると、「使い勝手はいいんだが、高い」らしいが、

東名で火のついた俺らには、金よりもこの広さと空きっぷりがご機嫌。

笑うくらい広い道、三車線を目いっぱい使って突っ走る。



最高だなぁ。

気持ちいいなぁ。

みんなもっとぶっ飛ばせばいいのに、もったいないなぁ……



って、おやおや、なんだよ。生きのいいのがいるじゃねえか。

ハイビームくれながら、小生意気につっかってきやがる。

よ~し、見てろよ? 今、その生意気なハイビームを後悔させてやるからな?



ついでに、その派手な赤いランプも。



赤いランプも……

 

 

赤いランプ?

 

 

ふと見りゃ、マルのやつはとっくに気付いて、さっさと速度を落としてやがる。

相も変わらずのスーパー裏切りモノ。



しっかし……こりゃ、ヤべえなぁ。

180以上は間違いなく出てたもんなぁ。

くっそ、参ったなぁ……とハンパに迷ってるから、車速が落ちない。



後ろの車は、なんだかスピーカーと身振りでいろいろ言いながら、バシバシパッシング。

そのうち業を煮やしたのだろう。

追い越し車線からぶっ飛んできて、俺の前に入った。



車窓から水色の長袖を見せながら、横柄な態度で横に寄せろといいやがる。

(んだよ、偉そうに。つーか、どーせメントリは確実なんだよな……)

メントリ(メンソールトリートメント)確実=これ以上マイナスはないということなワケで。






俺が決断を下すまで、およそコンマ二秒。

ぼるるるる……と回転の落ちていたエンジンが、突然、

ばるばるばるばるばるっ! っと爆音を上げ始めた。



今度は、マルと遊んでる時の比じゃない。

なんたってメントリ(面前焼鳥)を賭けた賞金レースなのだ。



勝っても賞金でないのに、負けると賞金払えってんだぞ?

そりゃ、負けるわけにはゆかなかろう?



つわけで、アクセルも千切れよとばかりに、俺はひたすらかっ飛ばす。

200を越えたあたりから、ヒヨヒヨ頼りなくなってくるフロントの手ごたえ。

めげずに、さらにアクセルを全開に固定。






そのうちハンドルがふるふる震えだした。

これ以上続けると確実に飛ぶ、その寸前のところでバランスしながら、ひたすら開ける。

が、彼らは驚くほどしつこい。



こうなってくると、道が広くて空いてるのが、逆に大きく仇となってくる。



どこのフライデーですか? ってくらいパシパシとパパラッチのパッシングを浴びつづけ。

前の車にどんどん道を開けてもらいながら。

まるで緋色の絨毯をゆく王族のごとき俺の神々しい姿。



うん、言い過ぎた。そんなたいしたものじゃない。



 


そのうちあきらめたのか、それ以上出せないのかわからんが、

彼らの姿が、ようやく見えなくなった。

まさに、機は熟したわけだ。



俺はすばやく車線変更すると、四日市の文字を見つけて、そのインターからさっさと降りる。

後で確認したら、『みえ川越IC』とかそのあたりだったようだ。



後ろを確認しながらインターを降り、一般道へ出る。

路肩に単車を停めて、一服しながらおーがに電話。

「もう近いから、そのまま走って来い」と、道順を教わる。



ところで、俺は自他共に認める、天才的な方向音痴で、

その上、己の下した決断に、無駄に巨大な自信を持つ性癖がある。

それを知っているおーがは、『道、わかったか? 大丈夫か?』と心配そうに、何度も確認する。



そう言われ続けると、なんだか逆に自信がなくなってくる、メンタルの弱いかみさん。

「わかった……かなぁ」などと微妙な返事をしながら、言われたとおりに走った。

んで、しばらく走って指定されたホームセンターの駐車場で、無事におーがと再会。



しばらくすると、はぐれた薄情者のマルもやってきた。






三人で酒を買い込んだ後は、おーがの家へ。

そこでナオミやおーがの嫁さん飼い主様、その愛息UKTと合流し、昼飯を食いに出る。



亀八食堂は、鈴鹿へ来るレース関係者なら、みんな知っているという有名な食堂……

とは名ばかりの、ごった煮みそ焼き肉屋だ。

と言われても、よくわからんだろうが、心配ない。

俺も詳しいことはよくわからんから。



大量の野菜を、ふちのある鉄板の上にぶちまけて、その上に注文した肉を全種類、一気に載せる。

そこへ、甘めだがすごくうまみの深い味噌をどかっと盛る。

あとは、野菜から水が出てきたら、すべてをがつがつと味噌に絡めて、肉に火が通ったら食うだけ。



基本的にはこれだけのことなんだが、も、驚くほど美味い。



どのくらい美味いかというと、俺とマルが二人して、

「また亀(かめ)っちゃおーぜ?」だの、「思い立ったら突然ココに来て、八(はち)っちゃう?」だの、

新しい動詞を作っちゃったくらい。



って改めて書くと、悲しくなるくらいバカだね、俺とマル。

 




腹いっぱいになったところで、鈴鹿サーキットへ。

おーががF1のチケットを持っていたので、みんなでF1の走りと爆音を楽しむ。

すんごく不思議なチケットだったけど、それについては誰かが書くと思うので割愛。



そのあと、走行動画用のビデオを、ハンドルに固定するための部品を買いに、南海部品へいく。

ウチの地元のライコランドとまではいかないが、それでも充実した品揃えだった。

だが、ハンドルにカメラを固定する、商品名『写助』は取り扱ってないということで、ここで動画撮影を断念。



あっさり帰ることにした。

いや、ほかのパーツを使うとか、ホームセンターに行くとかの意見も出るには出たんだが。

当の本人、つまり俺の心はすでに『酒』なわけで。



もう写助も佐助もどうでもいい。






おーがん家の近所の酒屋で、三重の地酒と焼酎を買い込み。

レッツ宴会!

……のはずが、いざ行ってみれば、動かない単車を見つけて、ごそごそと動き出す俺とマル。

当然、おーがも乗っかって、三人でおーがの持ってた不動のスクータ、「パル」の分解修理に取り掛かった。



そのうちマシン好きの飼い主様もやってきて、ああでもない、こうでもないと、いじくりまわす。

だが、パルのやつはうんともすんとも言わない。

飼い主様の愛車KPのヘッドライトで手元を照らしながら、いろいろとやってみたのだが、よくわからん。



なので、入れ違いにおーが家を訪れるZRZにすべてを託し、とっとと切り上げる。

つーか、何でもかんでもZに託しすぎだ俺ら。






よし、それじゃ今度こそ、宴会っ!

と、またまたその前に、飼い主様の作ってくれたカレーを食わなくちゃならん。

なんたって今回の三重行きの、もうひとつの大イベントといっても過言ではないのだから。



コレを食わずに、帰れるものかっ(帰れます)。



おーが、俺、マル、UKTの四人の子供は、カレーのスプーンを持って待機。

(UKTにはカレーは辛すぎるので、彼だけは別のものだったが)

準備ができたら、いざ、出陣。

しばらくは、バクバクとカレーを食う音だけが、おーがの家にこだまする。



ぱくぱく、もぐもぐ。



飼い主様いわく、「下手すりゃ戦前から使われているお皿」に、これでもかと盛られたカレー。

マルのが普通盛りで、俺とおーがのが大盛り……

らしいのだが、マル用の『普通』がすでに一般的な大盛り



俺とおーがの皿にいたっては、何とか盛りじゃなくて、普通に二杯分。



飼い主さま、わかってる。

で、激ウマのカレーを動けなくなるまで食ってから、ようやく宴会に突入。

つってもお腹いっぱいだから、そんなに酔っ払うわけじゃないけど。







「酒を飲むのは、(前回会った)ゴールデンウィーク以来やわ」

と言うおーがと飼い主様はちょっと赤くなっていたが、俺、マル、ナオミ、UKTはほぼシラフ。

や、UKTはもちろん完全にシラフなんだが、テンション的には一番酔っ払ってた。



飲みながら、スキーの話で盛り上がる。



俺は五年、マルもそのくらいやってない。

が、スキーはどっちかっていうと得意な方なので(スピードを出すのが)、

「どこに行こう?」とか、大いに盛り上がりを見せる。



約一名、乗り気じゃないヒト(N)もいたが、まあ、日本は民主国家なので、特に問題なし。

冬にはスキーオフをやろうと話は決まり、さすがに眠くなってきたので、みんなで雑魚寝した。

こうして、二日目の夜は過ぎていったのである。

 

 



三日目、月曜日

マルとおーがは寝起きが悪い。

マルは昔、俺のアパートに転がり込んで住み着いてたときも、前の晩、「明日仕事の面接に行く」言ってたはずが、朝、俺が起こしてやってから仕事に行き、昼休みに帰ってくると、まだ同じ場所で、同じ姿勢で寝てたりしたくらいのダメ人間。



そしておーがは、起こしに来てくれた弟や妹に傷を負わせ、

「お兄ちゃんを起こすの、もういやだ」

とまで言わしめた、キチガイ。



ちなみに俺はイメージほど寝起きは悪くない。

むしろ休みの日は、無駄に早起きな小学生メンタルの持ち主だ。






でまぁそんな寝起きの悪いバカどもだが、前の晩楽しかったせいか、比較的、素直に起きる。

もちろん、一番早かったのは、UKT二歳バイク好き男子。



みんなで布団を片付けた後は、飼い主様の入れてくれたコーヒーを飲む。

飼い主様に、『コーヒー飲む?』と聞かれて、若干一名、『カレーを飲んでコーヒーを食う』とかほざいた、

ちょっと可哀想なヒトがいたおかげで、二日目のカレーもいただくことができた。



可哀想なヒト、もとい、この家の主人を筆頭に、またもがつがつとカレーを食う。

言っても二日目のカレーだからね。不味いわけがない。

危なくお代わりしそうになる、もう一人の自分と戦いながら、朝から元気にヒートアップ。



今日は帰らなきゃならないから、おーがや飼い主様ともう少し話したり、UKTと遊んどかなくちゃ。

てなわけで、体力のカタマリ、UKTと遊ぶ。

 

と、なにやらやけに、隣の部屋が静かだ。

なんだ? と思って見てみると、なにこの電脳家族。

ナオミはDSやってるわ、マルとおーがはPS2で空中戦してるわ。



んで、その様子を呆れながら眺めつつ、ふと振り返れば、

UKTはUKTでバイクのビデオを見ながら、うれしそうに、

「ぶ~ん、ぶぅ~ん!」

と叫んでいる。


彼は基本的には奇声を発したりしない。

子供嫌いの俺が珍しく好きなくらい大人しい子なのに、バイクの話になると人格が変わるのだ。

非常に将来有望な若者であることは、間違いない。若者つーか二歳児だけど。







やがて、その二歳児とメンタル的には同級生のマルが、



「あー! 帰りたくねーよ!」



などと吼え始めたので、おや、もうそんな時間か、と顔を上げ、そろそろ帰る準備をすることになった。

帰るとなれば心配なのは天気だが、俺の脳内お天気レーダーでは、雨は降らないはず。

なんだが、みんなが降る降ると力説するので、雨の準備をして、単車にまたがる。



と。



ぱらぱらぱらぱら……

とたんに雨が降り始めた。

頼りにならないレーダーもあったものである。

 

「マルよー! 帰りはゆっくり帰ろうな? 雨だし、危ないから」

「おめーが言うな! クソかみ。おめーが雨の中で馬鹿みたいにすっ飛ばすとか、いつも先にやり始めるんだろうが! 俺はやんねーよ。雨降ってんだから、こえーもん」



などと、ウイットに富んだフレンチジョークのやり取りをしつつ、別れのときが来る。

おーがと再会を約束し、マルと「安全運転で帰ろうな?」と約束して帰路へ。



今度は320キログラムの鉄塊の押しすぎで、貧血起こさなくていいよう、高速に乗る前にガソリンを入れ。



準備万端、後はさくっと明るいうちにできるだけ距離を稼ぎ、帰るだけ。



「遠足が終わっちゃったよー! 帰りたくねーよー!」

などと吼えるバカとともに、『みえ川越』から思い出の伊勢湾岸道路に乗る。

とたん。



フォォ~~~~ン!

消える、マル。

何が『雨だからこえーだ』バカ。



ま、ああ言う大法螺ふきのキチガイは放っておいて、俺はあくまで安全運転に徹しよう。

楽しかったこの三日間の思い出を堪能しながクォ~~~~ン! 堪能させろよっ!

くそ、もうアッタマきたっ!



幸い、雨もほとんど降っていない。

場所によっては乾いているところさえある。

俺とマルは半乾きの伊勢湾岸道路を、全開でぶっ飛ばす。






しばらく走って、豊田ジャンクションから東名に乗ると、突然、降ってきた。

雨ざんざん、単車に身体に突き刺さる中。

リアタイアから真っ白い水しぶきを上げて、俺とマルは東名を走る。



そのうち、連休帰りの車が混みだし、そこそこ多くなってきた。

「ま、しょうがねえよな」

幸い、みんな100キロから120キロのペースで走ってる。

だから、それほどストレスもないし、車の流れと一緒に走ってもそれほどフォォォォォォン!



流れに乗るとか、学べよクソマル!

メットの中で突っ込んではみたものの、行かれれば行きたくなる悲しいサガ。

結局、雨だからとか『さっき散々言ってた話』は全部フォーマット。



再インストール後のまっさらな俺とマルは、基本的には『死なないよう』に、多少は押さえ気味で走った。

つっても、いつも通りいつものごとく、俺が休もうとするとマルが、マルが休もうとすると俺が。

前に出て引っ張るもんだから、結局、牧之原SAまで、あっさり到着してしまった。






牧之原でおーがに連絡を入れ、ガソリンを入れる。

一向にやむ気配のない雨の中を、今度は足柄まで一気に走り。

最後のガソリンを入れて、あとは家までノンストップ。



と言うところで、ついに渋滞につかまった

ここは先に飛ばし始めたマルが責任を取るべきだと、誰もが思うところだろう。

当然、俺もそう決定を下し、マルを前に行かせる。



渋滞時のすりぬけは神経を使うので、前と後ろじゃ、疲れ方が違う。

心のどこかに、俺よりもマルの方は70キロくらい遠いんだよなぁ、とか俺らしい優しいさが浮かんでくる。

が、ここは鬼に徹する。



なぜなら俺には帰ってから、ツーレポと言う重労働が控えているからだ。



海老名SAあたりで一度渋滞が途切れる。

だが、その後もそこそこの混みっぷりは、さすが東名→首都高のゴールデンコンビ。

早く外環と東名、つないでくれよ、マジで。



首都高をすり抜けるころにはマルも結構キレてて、『行けんのか? 行けますよ』的にガンガンすっ飛ぶ。

当然、俺も、それほど疲れてないのをいいことに、マルのラインをトレース。

首都高、ご近所迷惑物語。



東北と常磐の分岐でマルと別れ、加平PAで小便をした後は、ホントに本気のノンストップ。

一気に帰ってきて、風呂に入り、おーがに電話して、今、ようやく現在に追いついた

走るのより、ツーレポの方が疲れた。



 



てなわけで、マーマレードスプーンイン三重もこれにて終了。

楽しくて、熱いツーリングだったよ。

最後に〆として、さっき電話でしゃべった、マルとの結論を記しておこう。

 

「なんだ。近いじゃん、三重県」

 

道路が凍る前に、さて、次はどこへ行こうか?





 
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by noreturnrydeen | 2005-10-11 18:41 | でっかいもん倶楽部 | Trackback
 
 
行ってきたわけだが。

なんでこう

『ただ行って、何事もなく穏やかに談笑して、おとなしく帰ってくる』

ってフツーのことが、俺たちってのはできないんだろうね?



ま、聞かれても聞かれた方が困るつー話なワケだけれど。



つわけで、とりあえず初日から順番に、時系列で話を進めようか。

つってもほら、俺の脳みそだから。

その辺、適当なのは充分承知した上で、読んでくれるといいよ。

 

第一日目、土曜日の午後。

マルのニンジャは不安が残るってなことだったので、万が一のことも考えて、一緒に行くことにした。

本来なら、柏インターから三郷を抜けて首都高に乗るところだ。

が、東北道で来るマルと合流するために、外環から東北道と合流する川口パーキングエリアにて待つ。



十五分くらい待ったところで、そのマルがやってきた。やってくるなり、二人して



「俺、今回は工具もって来たぞ!」

「おう、俺もだ!」



とか自慢げに叫んでる段階で、すでに負け組な二人。



人生の半分以上単車にまたがってるにも拘らず、

「予定とか準備とかに類することが、未だロクにできないというか、何度苦労しても気にしない」

のだから困ったものだが、それはさておき。



『お天気大名神』の異名を持つ俺。

超絶晴れオトコの面目躍如、大方の予想を覆して、この日の天気はいっそクソ暑いくらいの晴れ。

その上、相手は久しぶりのマルのニンジャ

これでドタマのエンジンかからない方がおかしいわけで。



走り出す前から、俺のやる気はフル充電。

 




行きは、車検を通したばかりで調子の悪い(?)ニンジャをいじめながら、140~180くらいで流して走る。



途中の300Rが続くうねった高速を、

俺は世界のホンダの足回りのおかげで楽勝ムード、

マルは16インチアンチノーズダイブとか意味のわからない足回りのおかげで、

終始ビリビリしながら、いい感じで飛ばす。



と。



ばしゅん!

一台だけ、元気なゴルフが大外から俺らをぶち抜いていった。

が、マルは限界みたいだし、せっかく久しぶりに走れるのに、そうムキになってやりあうこともないかと、

比較的大人の態度な俺。



まぁ正確には、マルをいじめてる方が楽しいってだけの話だったんだが。

 




陽が大きく傾いてきたころ、由比あたり。

「ここまできて由比のパーキングに寄らないのは、東本先生に申し訳ないなぁ」

と思っていたら、マルも考えることは同じだったようで、ウインカをつけて由比のパーキングへ。



トイレ休憩して、タバコを一服つけながら由比の海を見る。



マルとここへ来ると、昔のいろんなことを思い出す。

なんとなく寂しいような、懐かしいような、琥珀色の時間。

たぶん、ほかの誰と来ても、こんな感じにはならないんだろう。



俺の聖地のひとつだ。

 




ここまで来れば、吉田は目の前。

吉田インターを降りて、三年前の記憶をたどりながらダチのけいこの店へ。

ちょっと早く着きすぎて、まだ準備も何もしてないつーもんで、駐車場で第三の参加者ナオミを待つ。



2,30分すると、電車参加のナオミが、最寄駅からタクシーで乗りつけたので、三人で近所のうなぎ屋へ。

ん、もとい。

決して近所ではない、うなぎ屋へ。



つーかね、マルとナオミの二人とも腹空かしてるもんだから、明らかに遠くの方にある看板の距離を測れないんだよね。ダメ人間だけに。どう見てみても、確実にヒトの歩く距離ではないのに。俺ひとり、『たりーからタクシー使おう』と提案したんだけど、見事に却下。

哀しい話である。






てくてくてくてく……



100キロマラソンの、残り10キロくらいの感じで、テレテレと歩くと、ようやくうなぎ屋へ。



そこでうなぎが焼けるのを待ちながら、骨せんべいでビールを飲む。

うまいうなぎ屋で待たされるのは当前だから、短気な俺やマルも、おとなしく待ちながら、杯を重ねる。

やがてやってきた馬鹿ウマのうなぎを食って、骨せんべいを三重へのお土産に買い込み。



いよいよ、今回『静岡へ寄ることになった原因』である、けいこの店へ。



 


掘りごたつ形式で、カーペット敷き、『いつでも寝るがいいよ』的なつくりの店構えは、三年前と変わらず。

出てきたダチのけいこも、三年前と変わったのは、髪型と彼氏くらいのもんで。

ま、余計なことは言うなって話だ、もう書いちゃったけど。



とにかくそこから、一気に飲んだくれ大会。

途中から、この店でダチになった「まーちゃん」も参加して、宴は絶好調。

さらに、けいこが



「いまから、昭和の酔っ払いが来るよ。折り詰めの寿司と立小便が、最高に似合う人



言うんで、期待して待っていると。

まさにそのとおりのご機嫌な『昭和の酔っ払い』がやってきて、俺らも大笑いしながら、最高に盛り上がった。

俺とマルなんぞ、あんまり楽しくて、あっという間にぶっつぶれて、とっとと寝ちまったくらいだ。



もっとも、後で聞いた話では、

マルは早寝しすぎて午前三時ころ間を覚まし、

そこで知り合った激烈酔っ払いの兄ちゃんに、マルのクセに説教くれたりしてたらしいんだが。



俺、その時分にはすでに爆睡(酔)してたから、よく知らない。



こうして、一日目は終わった。

 




二日目、日曜日。

俺が10時ころ眼を覚ますと、マルはすでにいない。

けいこに、「どこいったんだ?」と聞くと、「下で(けいこの店は二階にある)バイクいじってるよ」つーんで、

(んだよ、また何かやらかしたのか?)

と思いながら表に出てみると、まるで朝市のごとく駐車場に広がる、ニンジャのカウルやシート



なんでこの男は、旅先で早朝からバイクを分解しているんだろうね。

バカだからだね、きっと。

 

「あにやってんだ?」

「おう、メインジェット変えてる」

「持ってきたのか? バカだね、相変わらず」

「うるせー!」

 

昨日、酔っ払った俺に、

「足引っ張られてしょうがなかった」

なんていじめられたもんだから、今日リベンジするために、なんとしても完調にしようというんだろう。

浅はかな男だと嘲笑しながらふと見ると、はずした100番のメインジェットが四つ転がっている。

 

「で、何番つけてるんだ?」

「142」

「バカじゃねえの?」

 

一気に42番もあげるつーわけだ。

キャブレターをいじる人なら、はぁ? と声を上げっかしれない。



もっともマルは、単車人生のほとんどを、このキャブをいじるためにささげてきたような男だから、

マフラーがこれなら、このくらいってのが頭に入ってるわけで、まさに経験は何よりの宝。

本人も、したくてした経験じゃないだろうが。



車検用にマフラーに突っ込んであったバッフルをはずして準備完了。

アクセルをレーシングさせてみれば、確かにご近所迷惑な爆音が、スムーズに上まで吹けあがる。

さすがといえば、さすがだ。



褒めたくねーけど。


 



けいこの彼氏に車で先導してもらって、近くのインターから東名に乗る。

と、マルは早速、調子見がてら、ニンジャで全開走行。

うん、調子を見るのに全開走行とか、意味がわからないだろうけど、それがマルなのだ。



よい子はもちろん、まねしちゃ駄目だ(よい子はココ見てません)。



フォ~~ン! クォ~~~ン!

四発の官能的な排気音を響かせながら、マルのニンジャが加速してゆく。

当然、俺も黙ってられるわけがない。



アクセルをぶち開けて、びりびりする風切音を感じながら、マルと一緒にクルマの群れをパスしてゆく。

Vツインの鼓動が消え、ホンダらしいスムーズな回転になり。

気持ちいいなぁ……ん、でもなんか忘れてるような…………あ。



インジケータランプのオレンジのやつが、煌々と照ってやがる。



そう、車でおなじみのガソリン警告灯、通称『貧乏ランプ』というやつだ。

本当なら、高速に乗る前に、ガソリンを入れておかなくちゃならなかったんだが、すっかり忘れてた。

つわけで俺はアクセルを絞り、燃費重視の走行に入る。



と。

昨日いじめられた男(栃木最強のバカ)が、その復讐をするべく、俺を待っていた。

俺が追いつくと、フォ~~ン! と消える。しばらくすると姿が見えてきて、またフォ~~ン!



俺も三十五歳になったんだ。

もう、大人なんだ。今ここでやるべきこととか、やっちゃいけないこととか、俺だってもう、よくわかってる。

これ以上、ヒト様にあきれられてしまうような、考えなしの行動をとるわけにはいかフォ~~ン!



このヤロウ!



結局、全開。






アクセルを開けてぶっ飛ばし、しばらくして、「いかん、いかん」と低燃費走行。

するとフォ~ン! てめ、この野郎! 全開走行。

これの繰り返し。



「ガソリン、さすがにヤバイよなぁ」



思っていると、緑看板(高速の案内板)に、『浜名湖PA』の文字。

やった、俺は賭けに勝った

マルにいじめられながらも、ここまでがんばって俺はプボボボボボォぷすん。




 

なぁ……

あとたった二キロじゃないか!




 

泣いたって叫んだって、単車には関係なし。

走ってきた勢いで一キロくらい進むも、ついに完全停車。

悪天候の合間、太陽が気まぐれにくれた輝くような陽光が、キラキラと水面に反射する中。

 

押したね。

乾燥重量320キログラムの鉄の塊を、ひたすら。

 

気付いたマルが、パーキング入り口に単車を停めて様子を見に来たころには、

血糖値の下がった真っ青な顔を汗でびっしょりぬらした俺、ものすごく素直な人間になってた。

マルがからかう言葉に、やり返す余裕さえない。

 

「手伝ってほしいか?」

「手伝ってください~~~!!!」

「この手が欲しいか?」

「欲しいですぅ~~~!」

 

さすがに、こんな状態の俺をからかっても面白くなかったのだろう。

マルも素直に手伝ってくれて、クソ重たいVTXを、どうにかこうにか浜名湖SAに運びこみ、ようやく給油。

んで、これから訪れる三重のダチおーがに電話した後、



キーをひねってセルを押すと。

きゅるるるるばるん!

一発でエンジンが眼を覚ました。いやー、ガソリンって、大事だねぇ。

 

「マル、マル! エンジンかかったぞ! なあ、ガソリンって素敵だな?」

「知るか、バカ」



ツッコまれつつ、マルの買ってきてくれたコーヒーを飲んで。

ようやく本来の調子を取り戻した俺たち(あなただけです)は、

東名高速を、ダチのおーがが待つ、三重に向かって走り出した。



俺のガソリンは満タン。

マルのキャブは、セッティングばっちり。

ようやく、役者はそろった。



あとはすべてを開放するだけだ






東名を一気に下ると、豊田ジャンクションから、新しくできたという伊勢湾岸自動車道へ。

おーがから「天気が悪いと横風すごいけど、よければ景色がいいし、ぜんぜん速い」と聞いていた道路だ。



昨晩、マルにそれを伝えたら、

「なにがー! そんないい道路なら、天気がよかろうが悪かろうが、そっちから行くしかねーべ!」

と、相変わらずアタマの悪い返事が返ってきていたので、伊勢湾岸自動車道行きは決まっていた。



ジャンクションに入るなり、迷うことなく伊勢湾岸へ向かう。
 


(後編に続く)
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by noreturnrydeen | 2005-10-10 18:03 | でっかいもん倶楽部 | Trackback

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by かみ