榛名山賊宴会 ―御心(みこころ)のままに― (前編)
2014年 08月 30日
仕事がハネると同時に、荷物満載のユリシーズにまたがる。
そのまま榛名湖へ向けて走り出し、三郷南のインター付近で、大切なことに思い当たる。
現在、ユリシーズのETC車載器を外してしまってることに。
「最近は高速なんか乗らねぇから、ETCいらねぇな」
と、勢いでETC車載器を外したのは、ついこの間のことだ。
あの時の俺に向かって、盛大に文句をたれながら、松戸市街から外環道へ乗る。
そのまま、最初は120スピード(=1/2時速)くらいで流しつつ。
だんだん速度が上がり、結局はいつもどおり、160から180上限くらいですっ飛ばし。
関越に乗ったところで、すげぇ久しぶりに高速チケットをもらう。
「そういや、昔のツーレポには、かならずこの写真があったっけ。最近は、まるっきし撮らなくなったなぁ」
なんて懐かしみながら、関越道をひたすらすっ飛ばし、渋川伊香保ヘ。
「かみは雨男」の風評被害を吹き飛ばす、さわやかな晴天に。
「なはは、ほらみろ。ホントは晴れ男なんだよ、俺は」
ゴキゲンでアクセルを開け、クルマの列を次々と、背中越しに放り投げてゆく。
渋川伊香保で降り、県道35号へ入る交差点。
ちょうど信号に捕まったので、降りて写真を撮ってみたり。
今夏はロングに行けなかったからだろう、このまま遠くまで行きたくて仕方なくなる。
ま、この先は35号から33号と、山に向かってだんだん路がツイストするのだ。
とりあえず、それで我慢しようか。
街中を抜け、山に入ったあたりから、気温が急激に下がってくる。
「おぉ、風が冷てぇ! 気持ちいい!」
大騒ぎしながら、荷物のせいですこーし動きの鈍い相棒を、右へ左へ躍らせる。
久しぶりの峠道だからか、まだちっとノリが悪いかなぁ。
と、前の方に、「革ツナギを着たSS」が走ってるのが見えた。
とたんにアドレナリンがあふれ出し、脳内に流れる、「ソルジャー・オブ・フォーチューン」のイントロ。
よーし、そんじゃイッパツ、追いついてやろう(・∀・)
ストレートエンドのツッコミで、一気に距離をつめる。
そのままゆるく右へ曲がりながら、じわっとテールトゥノーズ近くまで持ってゆき。
次のUターン気味に曲がりこむ左へ、縦に並んで飛び込んだ。
カリカリカリ……
向こうは、ちょっとムリヒザ気味に、膝をすりながら曲がってゆく。
コーナリングスピードが思ったより遅くて、こちらはリーンアウトで様子を見ながら、ベタづけに寄せ。
そのまま相手のミラーを覗き込むと、ちらっとこっちを確認したのが見えた。
当然、道をゆずるなり、アクセルを開けるなりするかと思ったのだが。
なんかそのままダラダラ行くので、かみさんガッカリ、気分が急激にしぼんでゆく。
荷物満載なので、車体を並べて強引に抜くには、道幅もブレーキも、ちっと余裕がない。
結構、エゲツなく寄せたんだが、マイペースを守る強い意志の人だ。
「あれ、やらない人なのか。う~む、残念だな」
やがてクルマに引っかかったところで、その姿をカメラに収め。
ちょうど榛名湖の入り口だったので、残念ながらそのまま右折して榛名湖へ。
完全に消化不良の状態で、とぼとぼとキャンプポイントを目指した。
いつものキャンプポイントへ着くと、どうも今日は、やたらと人が多い。
正確には、「いかにもランナーな恰好」で走ってる若者が、むやみやたらと多い。
なんだろうな、と思いながら見回してみると、どうやらマラソン大会的なことをやるらしい。
そのせいで、いつものポイントが「駐車禁止」になっていた(じゃあ、駐車しないでください)。
携帯でmixiをチェックしてみると、ろろちゃんはもう、到着してるようだ。
なので、電話して場所を確認し、ろろちゃんのいる場所へと向かう。
数分後、無事にろろちゃんと合流できた。
クロスカブでくるかと思ったら、久しぶりのテネレさん。
いったん、荷物を置いて酒や食い物を買いに行こうとすると、ろろちゃんが苦笑しながら。
「かなり遠くまで降りないと、買い物できないよ。前に、ボクとおーがたんが言っただろう?」
つわけで、すぐ側の「源泉かけながしの宿 ゆうすげ」へ買い出しにゆく。
ゆうすげには、食い物はともかく、酒やタバコは置いてあるのだ。
ま、俺は酒さえあれば、食わなくたって大丈夫だ。
それに、なによりeisukeさんが来るんだから、たぶん何かしら食えるだろう。
「他力本願」全開で、酒とタバコだけを購入してくる。
その間に、eisukeさんやよしなし先生がやってきた。
いつものポイントから、対岸に回り込んだので。
今日のキャンプ地からは、「榛名富士(はるなふじ)」がよく見える。
「うわぁ、ここは景色がいいねぇ。これなら、毎回こっちでやった方がいいんじゃねぇ?」
歓声を上げつつ、せっかくなので湖畔まで降りてゆき、そこで宴会をする事にしよう。
つわけで、まずはみんな、クルマやバイクの側にテントを張ってゆく。
そして、宴会道具だけを持って、それぞれ湖畔に降り立った。
湖畔で寝るのもいいけど、雨が降ったら大変なことになりそうだからね。
つっても俺は、寝るのが面倒になりそうだから、ここにコット(ベッド)を作ったけど。
荷物を運ぶのに何往復かしたので、すっかり暑くなって汗をかいてしまったマイトガイ。
「ぬう、暑いな。でも、そういえば今日は短パンを忘れてきたな。どうしよう」
しばらく考えて出した結論は、俺らしく勇気ある決断だった。
パンツマン・システムの発動だ(むしろ、何も考えてません)。
げらげら笑われても、防水ウエアの中で汗だくになるよりはマシである。
どうせしばらくすれば、気温が下がって汗もかかなくなるだろうしね。
つわけで、準備もそこそこに、ガマン出来なくなった俺は。
「ろろちゃん、よしなし!」と、向こうにいるふたりへ声を掛け、「お先に!」とビールをプシュ!
まずはクソ暑いさなかに飲む、最高の一杯を(・∀・)c[]
やがて、それぞれが準備を終え、いつもどおり「なーんとなく」山賊宴会が始まる。
eisukeさんは日本酒を飲みながら、早くも豚汁を作り始め、ろろちゃんや先生もビールを干してゆく。
今回投入した秘密兵器、「ヤブ蚊バリア」で、あたりに結界を張ってみた。
「全然、虫が寄ってこない」ってことはなかったけど、それなりに効果はあったようだ。
一回、目の前でアリンコが「引き返してゆく」のが確認できたからね。
と、eisukeさんがニコニコしながら、一升瓶を掲げてみせる。
清酒「船尾滝」は、この付近にある同名の滝から名付けられた地酒。
生産量が少なく、県外へ出ることがないという、珍しい酒だ。
そんなん聞いたら、とりあえず一緒に写真を撮りたくなるのが人情。
この面子が並んでると、画的にはド安定(・∀・)
ろろ 「ここはいいんだけど、トイレがないのがなぁ」
かみ 「穴掘ってすりゃいいじゃん」
えい 「ほい、あるよ」
eisukeさんが取り出した、「トイレ」こと折りたたみスコップ。
奥では乙女のろろちゃんが、「そんなのムリー」って顔をしてる。
してるつーか、作ってるwww
美しい景色、気心の知れたダチ、心地よい湖畔の風に、ビール。
いつもの、しかし何度やっても飽きない「シアワセな時間」に、思わず顔がゆるむ44歳。
先週も自宅近くでやってるんだが、コレばっかりはホントダメだ。
ヘタすりゃ毎週だって大丈夫だね、俺は。
いや、毎週やってたら、確実に10キロは太るだろうけど。
いつものように、バカ話をしながら笑っていると。
エンジン音と共に、ホームセンターボックスを積んだ、シャコタンハヤブサがやってきた。
「今回は新兵器を投入する」と宣言していた、しきだ。
ろろ 「新兵器のせいで高速に乗れないって言ってたから、原二(原付二種)を買ったんじゃないかな」
かみ 「いや、バイクの後ろにつなぐ、キャリアカーを買ったんだと思うよ」
などと、事前にずいぶんと「新兵器」の内容を想像していたんだが。
しきが持ってきたのは、我々の予想をはるかにぶっちぎる、まさに「兵器」だった。
これは反則だろうwwwwww
「ちっぷ」と「なな」は、しきの育ててるカワイイ娘たち。
山賊どもは全員そろって、「うおぉ!」と歓声を上げながら、わらわら集まってくる。
アイドルを囲んだカメコのごとく、やたらと写真を撮りまくるおっさんたち。
かみ 「どんだけ群がってんだ。女の子が来るより盛り上がってんじゃねぇか」
よし 「ははは、確かに(パシャパシャ写真を撮りながら)」
ろろ 「女の子が来たくらいじゃ、ここまで写真を撮ったりしないよ!」
そんな高らかに宣言されても(・∀・)
ちっぷとななを従えて、湖畔へ降りてきたしき。
かみ 「なるほど、だから高速に乗れなかったのか」
しき 「そうそう、マメにチェックしてやらないといけないから」
よし 「カワイイなあ(ニコニコしながら写真を撮りまくっている)」
すると。
ろろ 「なんだよ! さっきまで、俺がかわいいって盛り上がってたのにヽ(`Д´)ノ」
ろろちゃんの叫びに、全員が大爆笑。
カワイイ山賊仲間を加えて、テンションが一気に上がってくる。
しきは今回、燃料に「猫のトイレ」でおなじみ、ウッドチップを持ってきた。
ネイチャーストーブに入れて燃やしてたけど、思ったより火付きがよく、燃えも安定してる。
これはいいなぁと思ってたら、余ったやつをもらったので、次回、検証する予定。
とまあ、相変わらずのバカ軍団、げらっげら笑いながら呑んだくれていた……のだが。
榛名山の向こうから、怪しげな黒い雲が、もわもわと流れ出してきた。
雲はゆっくりと、しかし確実に、我々の方へ近づいてきて。
「こらぁやっぱり、ひと雨来るかねぇ」などと眺めていた矢先。
榛名の空が、ついに泣き出した。
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