野田山賊宴会 ―ミントジュレップ― (後編)

 
 
初使用のグリルは、天板の広さといい、炭の入るスペースといい、大正解だった。

最近は道具を、「軽さのソロ用」と「使い勝手の山賊用」に、分けて選ぶのだが。

このグリルは重量こそあるものの、仕舞い寸法、組み立ての簡単さ、料理時の使いよさがバランスしてる。

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収納するスペースさえあれば、ソロに持ってってもいいかなと思うくらい、出来がいい。

もっとも、ソロで「炭を持ち歩く」ってのもアレだから、実際は使わないと思うけど。

ロングツーリングの途中で使うなら、やっぱガソリンかアルコールストーブがいいね。



牛肉を焼き、鶏肉を焼き、それを愛するテネシーウイスキーと共に味わい。

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しかもまだ、イチバン好きなラム肉はまるまる残ってる、実に「喜ばしい状態」のかみさん。

緊張感のカケラもない、このフヌケた表情からも、それは明白だろう。

二ヶ月ぶりのキャンプに、なんども喜びのため息をつく。



が。



周りを、「ハエがぶんぶん飛び回る」のだけ、ちょっとばかり鬱陶しい。



ろろ 「それにしても、ハエが多いねぇ。かみさんの所は特に多い。ジンバブエなのかい?」

かみ 「なにをう! ろろちゃんのトコだって、いっぱい集まってるじゃないかヽ(`Д´)ノ」

ろろ 「やっぱり、かみさんから、何かしらハエをひきつける臭いが出てるんだと思うよ」

かみ 「そんな臭いしないよ! くっそー、なんでこんなにハエがいるんだ!」



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ろろちゃんも同じく、ハエには往生しつつも、ご満悦の表情。

よしなし先生も帰り、ふたりでまったりしながら呑んだくれ。

ハエがやたらと俺のトコに集まるので、試しに場所を動いてみたり。



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「改造ハーフコット」にイスを併用するのが、かみさんの宿泊スタイル。

ちなみにソロだと、イスの代わりに荷物を使うので、かなりの軽量化と省スペースを実現する。

そんなコットに寝転んで空を見上げると、気になることがひとつ。



かみ 「あ、そうだ、ろろちゃん。マジで雨降ったらどうする? あのへんの木にテントをひっかけて……」

ろろ 「いやいや、あっちに東屋があるじゃないか。雨が降ったらあそこで寝るよ」

かみ 「あ、そうか……でも、東屋まで行くの、メンドーだよねぇ」

ろろ 「うーん、問題はソコなんだよなぁ」



しばらく悩んだ末、二人が出した結論は、実に画期的なものだった。



テント生地を持って、トコトコと愛機に近づいてゆき、

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二台のバイクにかぶせてやれば、簡易テントの完成!

我々らしい、天才的なアイディアに、思わず満足の歓声が上がる(言いすぎです)。

つわけで早速、完成したテントに入ってみる、ろろちゃん。






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ろろ 「なんか、異常に暑いよ、この中」

かみ 「まあ、下がアスファルトだからねぇ」

残念ながらまだ、天才には遠かったようである(´・ω・`)






雨が降ったら、東屋でいいだろうと言う結論が出たところで。

もどってまた、バカ話したり、ボンヤリ考え事したりしつつ過ごしてると。

突然、ろろちゃんが「うわ! びっくりしたぁ! なんだおまえ、どうした?」と声を上げる



ぽけーっと考え事してた俺が、なんぞ? と思ってそちらを見ると。

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広い公園でフリーにされたワンコが一匹、ろろちゃんの側(そば)で尻尾を振っていた。



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どうやら、セブンプレミアムの缶詰に惹かれて、やって来たようだ。

ろろちゃんが絶賛するこの缶詰、確かに200円の値段が高くないと言えるほど美味い。

だが、空き缶の切り口をペロペロするのは、さすがに危ないだろう。



ろろ 「こら、だめだめ。ベロ切っちゃうよ。ああ、こら、そっちもダメだってば」

かみ 「なはは、えらい懐いてるな。俺の方にはこれっぱかしも関心がないじゃないか」

ろろ 「そりゃあやっぱり、かみさんが“ハエを呼ぶ臭気”を漂わせてるからじゃないかな」

かみ 「なにをう!ヽ(`Д´)ノ」



どうせなら、女の子を呼ぶ匂いを発したいものである(´・ω・`)






と、重低音が聞こえ、空を飛行機が飛んでゆく。

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ろろ 「また飛行機だ。この辺を通りがかる台数、クルマより飛行機の方が多いじゃないか」

かみ 「なはは、言われてみりゃ、確かにクルマより飛行機の方が多いかも」

ろろ 「軍用かな、ジャンボかな」

かみ 「さあ、どっちだろうね。自衛隊の基地は結構あるから、どっちの可能性もあるね」



なんでもない、そんな話をしながら、酒を呑んで笑いあう。

ほんの二ヶ月しなかっただけで、ずいぶんと「キャンプしたい気持ち」が溜まってたんだなぁ。

そんなことを実感しながら、炭火をいじり、ジャックダニエルを干す。






太陽が西の彼方へと沈み、涼しい風も吹いてきた。

そろそろ、夜が訪れる。

コレからがまた、キャンプの楽しい時間だ。

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炭を入れていたダンボールを燃やして、まずは景気づけに炎を上げる。

本来ならここで、さらに燃すものを探したり、余計なものを燃やしたりが、いつものパターンなのだが。

この日のキャンプは、いつもと違った状況になっていた。



そう、「ハエ」だ。



ふだん悩まされる「蚊」の方は、その割じゃなかったんだが。

いかんせん、陽が落ちてもハエが一向に姿を消さない。

何が気に入ったのか、もしくは気に入らないのか、俺たちの周りを、いつまでも飛び回る。

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持ってきた虫除けキャンドルに火を入れてみるのだが、ハエにはまったく効果がないようだ。

ろろちゃんが、ミントスプレーを貸してくれて、それをスプレーしてみるも、焼け石ウォーター。

と、ミントの香りをかぐうちに、記憶が呼び戻されてくる。



かみ 「あ、しまった! 俺もミントオイル持ってたんだ。それも原液を!」

ろろ 「原液は強いからね。水で希釈したほうがいいよ」

かみ 「(かばんを探り)ほら、あった、あった! よーし、それじゃコレを塗りたくってやれば……」

ろろ 「あぁ! だめだよ、かみさん! 原液は強いって!」




原液のハッカ油を、直接、顔面に塗りこむ、ワイルドマイトガイ。

風呂桶に1、2滴たらしてもスースーするアレを、たっぷりと顔に塗りこんだわけで。

当然、その「効果」はすぐに現れる。



意図したのとは、別の方向に。






かみ 「ぐおぉ! 熱い! いや、スースーする! いや、熱い! 顔が燃える!」

ろろ 「あたりまえだろう。普通、何倍に薄めて使うと思ってるんだい」

かみ 「目がっ! 目がぁ!」



ムスカのセリフを素で吐きながら、のた打ち回る、哀れなマイトガイ。

ひいひい泣きながら、しばらく固まって、ひたすら嵐が過ぎるのを待つ。

やがて、強烈な波が去り、なんとか目が開けられるようになってきた。



かみ 「あーびっくりした。原液すげぇなぁ!」

ろろ 「キミの愚かさにびっくりだよ。なんで直で塗ったんだい?」

かみ 「コレあれじゃね? タバコにたらしたら、メンソールになるんじゃね?」

ろろ 「なるかもしれないけど、やめたほうがいいよ」



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もちろん、やってみるマイトガイ。

「うっわ、マズ! なんだこれマズ……っぎゃあ! 痛てぇ、ノドやられた! ノド痛てぇ!」

たった数秒前の出来事からでさえ、何ひとつ学ばないのが、かみさんのいいトコロ(・∀・)



かみ 「くっそ、やっと落ち着いた。あー、ヒドい目にあった」

ろろ 「自業自得だよ。そしてかみさん、残念なお知らせがある」

かみ 「え? なんだい?」

ろろ 「ハエは相変わらず、君の周りを飛んでるよ」



なかなか根性のあるハエのようだ。

残念ながら「ミント作戦」は、我々の完全敗北で終わった。

次回は、もっと強力な虫除けスプレーを買って、戦いに臨もうと心に誓う。






強烈なミントの香りをあたりに漂わせながら。

景気づけにラム肉を焼きつつ、ジャック一本槍で呑んだくれてると。

駐車場に、一台のバイクが入ってきた。



こんな時間にやってくるバイクは、おそらく関係者だろうと近づいてゆくと。

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池袋のドッグソルジャー「しき」が、愛機ツーリングハヤブサでやってきた。



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ヘッドライトまで含めてフルLED、ビートルバッグ装備+シャコタンの、ツーリング最強仕様。

翌日が仕事で泊まれないのに、わざわざ顔を出してくれたのは嬉しい。

俺とろろちゃんは、テンションを上げてしきを迎えた。



ほぼ手ぶらでやってきたしきに、イス代わりのヨガマットと虫除けキャンドルを渡す。

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泊まれないから、料理もナシつーことで、お茶とお弁当を持参したしき。



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しかも持ってきた弁当は、あの「レブ弁当」である。

写真からも、乗ってる肉のサイズがおかしいのは見て取れるだろう。

レブ弁当を食うしきを見てたら、ちょっと小腹が空いたので、俺もひつじを焼いて食べた。



さすがに、全部は食いきれず、何枚かを炭にしてしまった。もったいない(´・ω・`)





と。

人間としての残念さでは定評のある、ダメ人間しき。

何を思ったか、「暑い!」とわめきながら、服を脱ぎ始めた。

脱いでしまうと、黒い腹巻をまる出しにして、どっかりと座り込み、満足げに笑う。

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その瞬間、思いついちゃったかみさん44歳。

思い立ったら、とりあえずやってみるのが、かみさんのいいところ。

つわけで、先ほど俺を苦しめた「ミントオイルの原液」を取り出し。



かみ 「しき、虫が来ないように、ミントオイルを塗ってやろう」

しき 「うわ! 男にオイル塗られるとか、気持ち悪い!」

かみ 「どあほう! 俺は仕事で、薬を塗ったりしてるんだ。変な気を起こすな!」

しき 「あ、そうか……え、納得していいのかn……うっわ! 熱っ! 寒っ! 熱っ! 冷たっ!」



やかましい男である(`・ω・´)






無事、しきを「ミント地獄」に落とし、ほくそ笑んでいると。

今度は、地獄の料理人、ろろちゃんが動き出す。

カップタイプのトムヤムクンを取り出した彼は、中身を鍋にぶちまけると。

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フライドポテトやトマト、様々なものを放り込み、いつものスタイルで料理を進めてゆく。

それを見ていた俺は、突然、いやな予感に襲われて。

あわててストップをかける。



かみ 「ろろちゃん、まった! それ以上作っても、キミ、食べきれないだろう?」

ろろ 「大丈夫だよ、みんなで分けて食べれば……」

かみ 「いいや、断る。自分のひつじでさえ焦がしちゃったのに、もう、食えないよ」

ろろ 「う~む……そうかい?」



ろろちゃんはシブシブと、食材を追加する手を止め。

俺はほっと胸をなでおろす。

しきへの被害はどうでもいいが、俺が巻き込まれちゃかなわないからね。






やがて。



「しき、出来たよ」

とにっこり笑った悪魔の料理人。

具だくさん激辛スープヌードル、「ろろヤムクン」を受け取るしき。



しき 「いただきまーす! あ、美味い! ろろちゃんこれマジでうm……カラっ! なんだヤベぇ辛れぇ!」

ろろ 「またそんな大げさなんだ……うほっ、これは辛いねぇ」

かみ 「ぎゃはははは! なにやってんだ、キミらは」



ろろヤムクンの猛烈な辛さが、口、食道、胃など、中からすべてを焼き。

ミントオイルの原液が、背中の表皮を、ガンガンと冷やす。

しきの「体温調節中枢」はこのとき、きっと大混乱を極めていたことだろう。






背中を冷やされ、中を焼かれ、大変なことになったしきは。

それでも、げらっげら笑いながら、ろろヤムクンを平らげる。

もちろん、俺たちも同じく、爆笑しながら酒盃を干す。



やがて、夜もいくぶん深い時間になり。

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冷罨法と温罨法ですっかり健康になったしきは、ハヤブサに乗って帰路についた。

しきを見送って戻ってくると、俺もそろそろ眠くなってきたようである。

ろろ 「えぇ、まだこんな時間だよ? もう寝るのかい?」



ろろちゃんは驚くが、これは呑みすぎたと言うより、生活習慣の変化が原因だ。

俺は最近、就寝時間が早い=起床時間が早い=今、眠いのである。

いやまあ、呑みすぎてるのも、確かに呑みすぎてるんだけどさ。

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テントに荷物やコット、イスを移し、眠る準備が整ったところで。

「んじゃ、おやすみー!」「おやすみ、ボクはもう少し起きてるよ」

の会話を最後に、俺は夢の中へと落っこちていったのだった。






開けて翌朝、目を覚ましてテントを出ると。

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ろろちゃんが姿を消していた。

時刻は朝の6時半。

携帯でmixiをチェックしてみると、上の写真と一緒に、ろろちゃんがつぶやいてる。



「かみさんお先にあがります(*´ω`*)」



あとで聞いたところによると、

「テントレス生活はシビアでしたw 夜露に濡れ濡れで4時に起きちゃったw」

ということだったらしい。



確かにこのキャンプ場は、結露の量が多いのだ。

とりあえず、「ろろちゃんが誰かに拉致されたんじゃない」と確認し、安心した俺は。

愛機KLX125に、手早く片付けたキャンプ道具を積み込んで。

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はるか15分ほど先にある、自宅を目指して走り出したのだった。



前回の連続飛び入り参加、大人数の山賊も楽しかったけど。

もう何回キャンプを共にしただろう、朋友と呑んだ今回も楽しかった。

泊まれないのに顔を出してくれた、先生やしきと会えたのも嬉しかった。



そして、今週末にはまた、榛名湖でダチと一緒に呑んだくれるのだ。






たくさん集まれば、もちろんめちゃめちゃ楽しいし、ふたりで呑んでも同じく楽しい。

単車に乗ることも、山賊宴会も、「日常から半歩出る」ところに、楽しさがある。

ハタから見りゃバカでも、だから俺はまた、単車に乗ってダチに会いにゆく。



その半歩のために。



そして、酒を酌み交わし、単車に乗って「無事に」帰ってくる。

そんなことを繰り返して、行けるところまで生きてみよう。

40の半ばにして、改めてそう思ってたりするのだ。



なんて堅っ苦しい話はさておき、焚き火を囲んで呑んだくれ、ゲラゲラ笑うのは最高だね。



んじゃ、次は今週末の榛名湖で(・∀・)/






野田山賊宴会 ―ミントジュレップ― /了


 
 
 
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by noreturnrydeen | 2014-08-23 12:23 | エンカイ | Trackback

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