「ほっ」と。キャンペーン

大郷戸山賊宴会 コールド・バンディッツ(前編)

 
 
前日の金曜日から、その兆候はあった。

くしゃみ・鼻水・鼻づまり・微熱……

いや、ちがう。花粉症じゃなくて、風邪だ。



そんでもキャンプ行きたいもんだから、「山賊に行けば治る」などと吹いてたかみさん。

微熱でボーっとしつつも、せっせと荷物を詰め込んで、ワクワクしながらベッドに入った。

しかし翌朝になって、明らかに身体の重さを自覚し、ちょっとだけ妥協する。



「タカシ来ねぇみてぇだから、のんびり仕様でいいや」



バイクのカスタムが間に合わなかったのだろう、タカシからの連絡がなかった。

本当なら上下レザー、久しぶりの「やる気仕様」で行こうと思ってたのだが。

ひとりで行くならのんびりモードだと、オフロード装備にする。






仕事をしていると、あと1時間で終わりという時刻になって。

がぼぼぼぼっ! ウォン!

インラインフォアの爆音を聞いて、俺は思わずニヤリとしてしまう。



「なはは、なんだ。間に合ったんじゃねぇか」



タカシが、カスタム&メンテナンスを終えたR750に、荷物を満載して現れた。

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ワンオフのアップハンに、ツータイア(ロード4)履いた、一見ナメられ仕様。

フルオーバーホールしたサスペンションには、低抵抗オイルシール。

高速域を削り、ワインディングスペシャルに生まれ変わったR750、いい雰囲気だ。



「ぎゃははは! なんだ、間に合ったんけ!」

「昨日、帰ってきたんですよ! そんで早速、上にあがって……」

「ふむふむ、なるほどNさんに見てもらったのか。んで、どうよ?」

「いいです! 上でも下でも! めっちゃ楽しいです!」



目ぇキラキラ、表情ワクワク、見てるこっちまで楽しくなる。

そのまま、ふたりでジリジリしつつ、受付終了時間まで待ってから……

いや、ちょっとフライング気味に仕事を終え、大郷戸へ向けて走り出した。






コンビニのドリンク剤で栄養を補給したら、北へ向かってすっ飛ばす。



俺はボーっとしてるし、タカシははしゃいでる。そしてふたりとも、荷物は満載。

やらかす要素は満タンなので、気をつけながら県道8号をすり抜け、国道6号へ。

車線と道幅が増え、流れもよくなってきたので、スピードを上げてすり抜ける。



もちろん、R750は後ろにべったりだ。



県道19に入ると、道は狭くクルマもそこそこ、すこーしだけツイスティになる。

今回は、トップエンド150スピード(1/2時速)くらいに抑えて走った。

それ以上だと、オフロードメットが風圧で浮いてくるのだ。



つっても、まろやか仕様だから、どの道、上の方は使えないんだけど。






そんな速度だと、もちろん、タカシの方はちょうど楽しく遊べるスピードレンジ。

ミラーで見てても、全身から楽しさがあふれてて、こっちのハンドリングまで軽くなる。

体感的にはいつもよりずーっと早く、50号のスーパーに到着した。

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「さあ、メシと酒を買って、山賊宴会だ!」

「俺は肉を食いますよ、かみさん。肉を!」



はしゃいでるタカシを見ながら、俺は心の中でほくそ笑む。



(喜んでるのも、今のうちだぞタカシ。最後の数百メートルはダートだからな)



荷物満載でやってきて、あと少しというとところで、ぐねぐねと左右にうねるダート。

「デイモンズ・テイル(悪魔の尻尾)」

と呼ばれる、大郷戸でもっとも恐ろしい、ロードバイク殺しの難関だ。



もちろん、今、思いついた設定だけど。






最後の難関、「ドラゴン・ファング(龍の牙)」を、なんとか超えて。

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俺とタカシは、大郷戸へたどり着いた(さらっと難関の名前が変わってます)。



すると、そこにはすでに、よしなし先生が到着していた。

俺たちは先生の愛機、R1200GSの側へと、単車を滑り込ませる。

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桜の木の下には、骸(むくろ)が埋まっていると言う。

そしてその骸は、花見るものを、狂気へと誘(いざな)う。

古(いにしえ)の言葉どおり、咲き誇る桜の下には、すでに「向こう側」へ渡りかけている先生。



「よ、よしなし! おめ、顔、真っ赤じゃねぇか!」



先生は、此岸(しがん)と彼岸(ひがん)の、挟間(はざま)にいた。

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つーかまぁ、要するに、この男も俺と同じく、思いっきり風邪を引いてるのだ。

なのに、それを無視して、のこのことキャンプへやってきた。

んで、体調が悪いのに呑んじゃったもんだから、あっという間に酔いが回っているのである。



ふと昨夜、mixiでかわした言葉が思い出される。



かみ 「くっそ、このタイミングで風邪ひいたwww」

よし 「マジすかwww 俺ものどが痛いですよwww」

かみ 「キャンプやれば治るよなwww」

よし 「あたりまえじゃないですかwww」



俺とよしなしは、この時すでに、昨夜のセリフを後悔し始めていた(´・ω・`)






とは言えもちろん、ここで帰るなんて選択肢はない。

とっととプロテクターを外して荷物を降ろし、テントの設営と宴会の準備に掛かる。

んで、タカシが強風にあおられて、テント設営に四苦八苦してるのを見た俺は。

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ニヤニヤ笑いながら、ワンタッチテントを目の前で広げてやる。

「くっそー! 俺はぜってー買いませんからね! ワンタッチテントなんて!」

タカシの悲鳴が、熱でボーっとしたアタマに心地よく響く。



ひととおり準備が出来たら、今日は風が強いから、ガソリンストーブで料理をしよう。

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買って来たウインナーなんかを焼きながら、まずはビールでカンパイ。

やがて設営を終えたタカシもやってきて、炭の火熾しにかかった。

が、これがまた、そう簡単な話ではないのである。



なぜなら、やつが買って来たのは、炭の王様「備長炭」なのだから。






ご存知の向きも多いだろうが、備長炭ってのはとても火持ちがいい。

そしてその代わり、火を熾すのがものすげぇ難しいつーかめんどくさい。

うまい人でも20分やそこらは、平気でかかるのが普通だ。



そしてタカシは、初心者なのである。


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もっとも、自分で調べて「難しいのは充分わかった上で」、買って来たようだ。

熾し方を調べてきたようで、なにやら色々と細工をして頑張っている。

ならば、ここで余計な口を挟むのは、山賊の流儀じゃない。



俺とよしなしはアイコンタクトしてニヤっと笑うと、呑みながらタカシの火熾しを見守った。






火熾しを眺め、桜を眺め、青い空を眺めながら、酒を呑む。

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気分はいいんだが、風が強いのがジャマ臭い。

一度、半パンにTシャツで呑(や)りはじめたんだが、すぐに上下を着込む羽目になった。

くっそ、こんな寒いんじゃ、やってられねぇなと口を尖らせていると。



「かみさん、焼けましたよ」



よしなし先生が、炭火で焼きたての焼き鳥をくれた。

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名古屋のボス、ともっちさんが送ってくれた、名古屋コーチンの焼き鳥だ。

グルメなともっちさんがくれて、先生がじっくり焼き、軽く塩を振ったヤキトリ。

んなもん、美味いに決まってるんだが、食った瞬間、思わずうなり声が出る。



想像してたより、さらにワンランク上の美味さだったのだ。



「うおっ! こりゃうめぇ! なんぞこれ!」

「いやー、ホント美味いっすねぇ。はい、タカシくんもこれ」

「うっめぇ! マジ美味めぇ! こんな美味いヤキトリ、生まれてはじめて食いました!」



タカシのセリフも、それほど大げさなわけじゃない。

そのくらい、ともっちヤキトリはバカ美味だった。

ともっちさん、ありがとうございました!






寒風に吹かれつつ、ヤキトリのうまさに大騒ぎしていると。

フォンフォンと並列四気筒の排気音が聞こえてくる。

見ればスーパースポーツが一台、こちらに向かってやってくるところだ。



難所、「大蛇(おろち)の背」を超えて来るSSなんぞ、関係者に決まってる。

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やってきたのは朋友マルと、ヤツの愛機GSX‐R1000<K6>だった。



ニヤニヤしながらメットを脱いだマルは、焚き木にドカリと腰掛ける。

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「おうマル、あんだおめ、荷物がすくねぇな。今日は泊まんねーんけ?」

「ああ、今日は帰る。つーかこの寒いのにキャンプとか、バカだねぇおまえらは」

「マルさん、これ、ともっちさんからの差し入れのヤキトリ」

「お、さんきゅー先生。もぐもぐ、うお、うめぇ。うめぇなコレ」



ヤキトリ食ったら、バカ話したり、みんなの単車を眺めたり。

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自分の単車の写真を撮ったりと、忙しいマルゾー。





一方、俺の方はと言えば、のんびりと宴会を楽しんでいる場合ではなかった。

とにかく、風が強くて寒いったらないのだ。

いやもちろん、風邪ひいて熱があるから、余計に寒く感じるんだろうけど。



んで、とにかくこの状況を打破しようと、トンチをめぐらせるマイトガイ。

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コットやテントを単車に立てかけ、「即席の防風シェルター」を作ってみる。

多少マシにはなったものの、やはり、背中にゾクゾクと寒気が走る。

セキは出るわ、くしゃみは出るわ、鼻水は止まらないわ、散々の状態だ。



「どっかに、風をよけられる場所はないかなぁ。東屋は……壁がないからダメだよなぁ」



ぶつぶつ言いながら、ふらふら徘徊していると。

おや、どうやら向こうの東屋には、小さいけど壁があるじゃないか。

試しに中へ入ってみると、わりと風が防げるカンジだ。



戻ってきた俺は、よしなしとタカシの前に立ち。

「悪りぃけど、寒いからあっちの東屋に移動しようぜ」

満面の笑みを浮かべて、高らかに宣言した。






と、ここでマルがタイムアップ。



マル 「んじゃよ」

かみ 「ああ、またな。今度、走りに行こうぜ」

マル 「あーよ」

よし 「気をつけてー!」

タカ 「まるさん、お疲れっす!」

マル 「先生、タカシも、またなー!」

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マルゾーがあわただしく帰っていったところで。

こちらも、荷物を担いで大移動を始めた。

太陽は山の向こうへ静かに沈んでゆき。



そろそろ、炎が欲しくなってくる時間である。




後編に続く



 
 
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by noreturnrydeen | 2014-04-12 11:49 | エンカイ | Trackback

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