大郷戸山賊宴会 こりないヤツラ 中編
2013年 11月 03日
夏場の大郷戸は、ブヨが多い。
しかし、コレだけ涼しくなってくれば、さすがにヤツラも居ないだろう。
そんな風に思いながら、それでもちょっとした虫除けに火を焚く。
煙が上がって、羽虫程度なら避けられる。
たぶん、ブヨも避けられるだろう、と、このときは考えていた。
それが、どれほど浅はかな考えかも知らずに。
やがて、下からエンジン音が聞こえ、ろろちゃんが現れた。
愛機テネレ1200は、今回もイロイロとカスタムが進んでいた。
その最たるものが、ブラックの渋いパニアケースだ。
リアボックスと併用で、狂ったような積載量を誇る。
「積めるようになったぶん、余計なものまで持ってきちゃうんだよ」
ダメじゃん(´▽`)
ろろちゃんが来たのを潮に、改めて東屋の全貌を撮ってみたり。
すると突然、地面がグラグラと揺れた。
「うおっ! 地震だっ! ろろちゃん、地震だよ」
「揺れるねぇ。そして、東屋の屋根も、すごく揺れてるねぇ」
「ぎゃはははっ! ホントだ! すげぇ揺れてる! 大丈夫かな、俺たち」
筋交(すじかい)もない四本柱の東屋は、いいだけ揺れている。
揺れが収まってもしばらく、「屋根が落っこちてきたら死ぬね」、などと笑っていた。
ひとりだったら、も少しビビってただろう(´▽`)
昼は喰ったし、酒も入ってる俺は、ろろちゃんの準備を眺めながら、ツマミを焼く。
たっぷり600gほど買ってきた、豚モツを網焼きしてやるのだ。
そんで残りは、も少し寒くなってきてから、スープで煮込んでモツ煮にする。
そのうち、ろろちゃんも荷物を降ろして、つまみを作り始めた。
最近ハマってる、ブリトーの網焼き。
焼きあがったのを、「はい、かみさん」とくれたので、ありがたくいただいてみる。
「うお! めっちゃ美味いじゃん焼きブリトー! へぇ、やるなぁブリトー」
「ね、美味しいでしょ? レンジであっためるより、ずっと美味しいよね」
網焼きブリトーに舌鼓を打ちながら、ろろちゃんとふたり、のんびり呑み始めた。
「そう言えばさ、ろろちゃんと(野外で)サシで呑むのって、あの橋の下以来じゃない?」
「そう言えばそうだねぇ。懐かしいねぇ」
あのとき、橋の下で野宿しながら酒盃を交わした男は。
かけがえのない朋友のひとりとなって、今、目の前にいる。
そんな不思議な縁を嬉しく思いながら、俺は友と杯を重ねる。
静かな山の中で。
ふたりとも黙って酒を呑みながら。
穏やかな時間が流れてゆく。
とるるるるっ!
静かな排気音とともに、荷物を満載したトレール車が現れた。
茨城の誇る最強ハンター、よしなし先生の登場だ。
「うーい!」 「ういーっす!」
もはや何語かさえわからない挨拶をかわし、とっとと準備を始める先生。
手早く準備を整えると、どかりとイスに腰掛けて。
まずは、カンパイだ。
見慣れた顔、いつもの山、そして酒。
テンションが上がるというよりは、穏やかな喜びにつつまれる。
ろろちゃんのテネレを検分する、よしなし先生。
ヤツのメインウエポンは、BMWのR1200GSだから、テネレは気になるバイクなのだ。
リアケースのマウントや、パニアの話で盛り上がっている。
俺は、「絶対に箱を積まない」ので、なんとなく横で話を聞いてた。
焚き火台に炭を足して、モツ煮の準備を始める。
まだ、腹が減ってるわけじゃないが、モツは煮込んだほうが美味いからね。
山賊といえば、もはやテッパンのふたり。
俺と三人で、他の追随を許さない、圧倒的な「山賊宴会参加率」を誇る。
そんなよしなし先生の足元には、組立コンパクト焚き火台、「B6君」が展開されている。
俺の用途にはちと小さいが、ソロでつまみを焼きながら呑むには充分なサイズだ。
写真には写ってないが、ろろちゃんの足元にも、同じグリルが展開している。
やがて秋の陽が傾き始め、あたりが薄暗くなってきた。
よしなしは鶏だんご鍋、ろろちゃんはおでん、そして俺はモツ煮と、みんな汁モノだ。
寒くなってくると、暖を取れる汁物がイチバン美味い。
まして、こいつらと呑みながらなら、余計に美味い(´▽`)
三人そろって、腹が膨れたら。
それぞれのコンロで炭火に当たりながら、更に酒盃を重ねてゆく。
写真はフラッシュを焚いてるが、実際に見える映像は。
こんな感じで、すっかり真っ暗だ。
ガソリンバーナーやガスバーナーのような燃焼音がないので、実に静かである。
時折りパチパチとはぜる炭の音を聞きながら、ポツポツしゃべったり、無言で炎を見つめたり。
1mgも気を使わなくていい連中だけに、その無言でさえ楽しい。
山の中で火を焚き、それを眺めながら、ただ酒盃を重ねる。
たったそれだけのことが、どうしてこれほど楽しいんだろう。
答えも出ないまま、夜は更けてゆく。
しかし、この夜は、このまま静かには終わらなかった。
後編に続く