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秩父山賊宴会 ―初冬の山賊・発動編―

 
 
楽しく呑んだくれるンだが、寒いから酔いが回らない

正確に言うと、おそらく酔っ払ってるんだが、酔っ払ったときの火照りや、気だるさを感じない

当然、呑むペースはハイスピードモード。



赤ワイン、秩父白ワイン、牛久白ワインと、つぎつぎビンが空いてゆく

それでもまだワインはあるし、なんならジャックダニエルはまるまる二本のこってる。

酒の尽きる心配がないから、俺のご機嫌は上がってゆくばかりだ。



ガソリンをポンピングして、次々に肉団子をゆでる。

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つっても、自分はもうお腹いっぱいだから、誰かに食わせるのが主になる。

KYくん、うわばん、しき、と団子を配って回り、気分はもうeisukeさん




やがてKYくんが帰ってゆき、後を追うようにタツヤも立ち上がる。

そこへ、よしなし先生の怒声が上がった。


「なんだよ、タツヤ。どこに行くんだ?」

「帰るんだよ。あったかいお風呂と布団が待ってるんだ」

「なんだ寒いのか。じゃあ、火に近づけよ」


いや、そういうことじゃないと思うよ? よしなし先生。





罵声を浴びながらタツヤが帰ってゆくと、入れ違いにクルマがやってくる。

秩父の紅ニ点、ピンキー&やよいちゃんの、物好きコンビだ。

この寒空の元、わざわざ仕事の研修帰りに寄ってくれたらしい。



それを聞いたしきが、すばやく暖かいうどんを取り分けて、ふたりへ渡している。

おぉ、気が利くなぁと思ってたら、「いや、あまりモンです。お腹いっぱいなんで」とヒトコト。

おそらく照れ隠し半分、気を使わせないためが半分ってトコだろう。


ホント、気持ちのいい男だ。



やつの気遣いを無駄にしちゃいけないので、周りは笑いながら、しきをいじる。

「あんだ、あまったの押し付けただけじゃねぇか」

「ひでぇヤツだ」

ニヤっと笑って返すしきの顔は、なんだかやけにオトコマエに見えた。

まあ、たぶん気のせいだけど。






ところで、俺には心配事があった。

ハイコンプのビューエルは、寒いと、とても始動性が悪い

冬の朝など、毎回、緊張を強いられるし、昼休みに一回エンジンをかけておかないと、帰るときにはセルを回した瞬間、「んがっ……」と息継ぎするほどだ。かといってやわらかいオイルは、まあ、ほら、アレだろう? そして今晩、俺たちが夜を明かすのは、魔境、秩父の川原

俺の経験つーか感覚で言えば、群馬の赤倉林道でやった雪中行軍のときより寒い場所だ。




「やべ、エンジンかけておかなくちゃ!」

「なに言ってんすか、かみさん?」

「バッカ、かけとかねーと、マジでかかんなくなるんだよ」



言い返しながらキーをオンにして、セルをひねる。

んがっ! んががが……きょきょきょ…………ぎょるっ……ぷすん。

「あーも、やっぱりだ! くっそ、少し休んで……よし、もういっちょ!」

んががっ! がるっがるっがるっ……ばるん! ばるん! どっどどっ、どっどどっ……

「かかった! あっぶねぇ!」

一発目でかからなかった時は、正直、ちょっと気が遠くなった(´・ω・`)




「ぎゃははは、それじゃあ俺が、国産の威力を見せましょう」

しきが笑いながら、キーオンしてセルを回すと、あっけなく始動するブルハチ。

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国産水冷Vツイン対メリケン空冷Vツイン。

心なしか、右のユリシーズは腰が引けてるように見える。

がんばろうぜ、相棒(´・ω・`)




寒い中、焚き火に当たりながらしゃべって笑い。

やがて、呑んでないやよいちゃんが、クルマで家に帰ってゆく。

そのクルマに乗ってきたはずのピンキーは、まるっきし帰る気配がないが、これはまあ、いつもどおり。いいだけ酔っ払って出来上がったところで、気の毒なお母さんがお迎えに来てくれるのである。最初こそ、怪しげなヤロウどもばかりで、心配してたお母さんも、最近は慣れたようだ。

ま、自分の娘の方が、ある意味、山賊らしい山賊だからね。



その女山賊、早くも出来上がってきたようで。

お気に入りのろろちゃん相手に、なにやら妙な遊びを始める。


「あ、もしもし、ろろちゃん? 今、なにしてんの?」

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と、ゴキゲンで話すピンキーが耳に当ててるのは、ごらんの通りただの薪ざっぽ

突然、狂ったかのような行動をするピンキーに、周りは大爆笑だ。

俺もノリで「もしもし」とやったのだが、あとで写真を見たらあまりに痛々しいので割愛。

よしなしんトコに写真あるから、見たいヒトはそっちで(`・ω・´)キリッ





そんな風にバカやってると。

いよいよ、秩父が本気を出してきた。

周り中に白く霜が降り、目を離すと火から遠いすべてのモノが凍り始める。


「うお、ヤバいな。凍り始めた。ちと、溶かしてやるか」

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キャンプ用必須バッグやグローブを並べ、焚き火に当てて霜を溶かす。


すると、しきのコットの後ろ側、座ってない部分も凍ってるというので、

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ビシっとに火であぶり、溶かしてやる。

ノリノリの俺と、心配そうに見つめるろろちゃんのコントラストも、山賊名物。




やがて、絶好調になってきた、かみさん43歳、哀しきマイトガイ。

「おうふ、ヘルメットも凍ってるじゃないかデュフフフ……」

泥酔気味のマヌケな笑顔でユリシーズに近づくと、ヘルメットを持って舞い戻り。

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ヘルメット・オン・ファイア

ろろちゃんはすでに、何かをあきらめた表情で見守ってくれている。

いつもハラハラさせてごめんね?



とまあ、「寒くて酔えん」とか言いながら、しこたま呑んでいいだけ酔っ払い。

みなが大騒ぎする中、俺はひと足先にギブアップ。「もう寝るのか」と、からかわれながらもテントの中へ引っ込み、買ったばかりのダウンシュラフへもぐりこむ。聞こえてくるみんなの楽しそうな声に、なんどか後ろ髪を引かれつつ、テントを出たり入ったり。

最後は秘密兵器<耳栓>をねじ込む。



静寂と満足に包まれて、

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俺は心地よい眠りについた。







あけて翌朝。

新しいシュラフは、冷気をカンペキに遮断してくれ。

100均の耳栓も、きちんと仕事をこなしてくれたようだ。

そのため、今迄でイチバン深い眠りにつけた俺は、実に爽快な気分で目を覚ます。

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外はまだ霜が降りて、空気が肌を刺すように冷たい。

「おはよう! いやぁ、気持ちよく眠れたよ! ダウンシュラフと耳栓、最強だな!」

などと能天気に騒いでると、よしなしがあきれたように、「タツヤが来たのに気づかなかったんですか?」と聞いてくる。筑波へ行くといってたのだが、その前にこちらへ寄ったらしい。もちろんビタイチ知らない俺がびっくりしていると、うわばんもうなずきながら、「爆音でしたよ」と半笑い。

迷惑な話だが、秩父では圧倒的な権力を持ってるオトコだけに、文句も言えなかったのだろう。

こっちのホームに来たときにでも、いいだけ叩いてやろう。




クルマのよしなしとうわばんは、撤収にさほど時間がかからない。

なので、ゴミを片付けてくれたりしてる。

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ろろちゃんやしきも、撤収を半分ほど終えている。

つっても各自勝手にやって、勝手に帰るのがマーマレードスタイル。

俺はアルストを持ってくると、お湯を沸かし始めた。




と、昨日ろろちゃんにもらったお吸い物が見当たらない。


「あれ? ろろちゃんにもらったお吸い物がないぞ? しかたない、白湯でも飲むか」

「しょうがないなぁ。かみさん、コーヒーあげるよ」

「おぉ、ありがとう!」


顆粒タイプのコーヒーをもらって、ゆっくりと飲みながら、朝の空気を楽しむ。

焚き火を焚いて騒ぐ野宴もいいが、ピンと張り詰めた冬の朝の空気もいい。

これで連休だったら、どこまででも走っていけるのになぁ。




ふと、写真を撮りたくなったので、みなの単車を撮って回る。

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青空に映える、ろろちゃんのBMW‐F800S。




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夜はLEDでド派手だが、明るいとマットブラックが渋い、しきのブルバード800。




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そして、俺のユリシーズと、一夜を過ごした<屋根だけテント>。

見たまんま、普通のテントより、地べたに直な分だけ寒いんだが、ダウンシュラフは偉大だ。

でも、さすがにもうコットは寒いだろうから、次回はまた別の装備を持ってくる予定。

予定つーかもう買っちゃったから、決定事項(´▽`)





ユリシーズの車体は、日のあたらない部分が、まだ霜で覆われている。

「そうとう寒かっただろうから、こらあ、充分に暖めないと機嫌が悪いだろうなぁ」

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春菊(ライト内ハムスターの名前)も、心なしかスネてるっぽい。




なんて写真を撮って遊びながら、ちんたら撤収していると。

準備の出来た、よしなし、うわばん、しきと、順に片手を上げて帰ってゆく。

ろろちゃんはテントを干すのに時間がかかったのだろう、まだ作業中だ。



そんなろろちゃんより、ひと足さきに撤収を終え、「またね」と笑って走り出したところで。

本日の山賊宴会は、無事、トラブルなく終了。

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いつものメンツ、初参加の長いダチ、わざわざ顔を出してくれた面々。

みんなに感謝したくなる、相変わらず笑い倒した野宴だった。

やっぱり、寒い中で火を焚くのが、イチバン楽しいね。



さて、今年もそろそろカウントダウンだけど。

山賊にとっては、冬こそオンシーズン。

宴会は無理かもしれないけど、

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年内にもう一回くらい、ソロで野宿しようかな。





秩父山賊宴会 ―初冬の山賊― / 了
文責/かみ

 







 
by noreturnrydeen | 2012-12-01 16:24 | エンカイ

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