野宿旅 in 房総半島 2/2
2006年 11月 30日
国道を離れ、フラワーラインを走り出す。
しばらくフラワーラインを走っていると、なんかステキな光景が目に入った。期待できそうなワインディングなので、フラワーを外れて右折し、そっちへ足を伸ばす。 気まぐれ旅のいいところだ。
この先、200Mくらいで行き止まりだった。
俺だけじゃなく道も気まぐれでやんの。
ガッカリスと戯れながら引き返し、フラワーへ戻る。海風が冷たいが、車も少ないし、気持ちのいい道路だ。攻める気マンマンだと、ちっと物足りないだろうが、片目でトコトコ走るには、ちょうどいい感じ。
曇天なのが惜しまれる。
つーか、いたるところに植えてある南国チックな樹木が逆に寒い。
冬の海は、冷たくて寂しい。
走ってるうちに、だんだん自殺しそうな気分になるね。
やがて房総半島の南端、白浜野島崎に着いた。
ここで地図を広げてみると。
この先の灯台が、日本最古の八灯台のヒトツだと書いてあった。
なので、それじゃあと行ってみることにする。 フラワーに戻るとすぐ、それが見えてきた。
近くまで行ったら、思いのほか車が多かったのでやめた。
だいたい、八灯台の残りの七つも良く知らないしね。
10キロほど走ると、またも道の駅のカンバン。
普段ならこんなペースでは絶対、休憩入れないんだが、寒いのと、のんびりツーリングなのとで、ここにも寄ってみる。ぶっちゃけ、おしっこが近くなったんだよねー だからしかたないじゃん?
道の駅「ちくら・潮風王国」
そりゃあ寒いはずだよ。潮風の王国だもん。
民主国家日本の領土内で、堂々と王制を敷いてる小国でトイレを借りると、革ジャンのジッパーを引き上げて、冷たい海風の中を、また走り出す。ジーンズのすそから、寒風が吹き込んでくる。そんな中、俺は猛烈に後悔し始めていた。
海のにおい、街のにおいの変わり目が嗅ぎたくて、半ヘルかぶってきたことを。
つーか、冬の房総なんてけっこう来たことあるのに、なんでこんなナメたカッコしてんだ俺。
途中から、房総黒潮ラインに乗り、さらに北上する。
海沿いの心地よい道路を、エンジン音を低く響かせながら、そして海風を心地よく肌で感じながらえぇいっ! 寒いつーんだ! もうこれ以上、潮風なんか吹かんでいいから。少しおとなしくしててくれよ、風。
なんか雲行きが怪しいなぁと心配しつつ、黒潮ラインを淡たんと走る。
どこかでドラッグストアか眼鏡屋を探し、コンタクトを買おう。
買ったら、もうひとつ考えてた方のルートに行こうか。
なーんて思ってたのだが。
見つけた店、全滅。
フツーの眼鏡屋が見つからない。しかたなく片目のまま鴨川、勝浦と抜けるうち、ビーチラインの手前に来てしまった。本当はこのまま九十九里を抜けて、銚子か鹿嶋から帰ろうと思っていたんだが、寒さと雲行きに心が折れる。片目だし。
折れたらあとは速攻だ。
九十九里ビーチラインには行かずに、そのまま128号を走る。
考えていたもうひとつのルートというのは。
佐倉にある、『国立歴史民族博物館』を見学するコースだった。いちど行ってみたくて仕方なかった場所である。 大きくて、見るところがたくさんあるので、二三時間じゃ回りきれないと聞いていたから、一日かけてゆっくり見てみたかったのだ。
ちょうどいいから、博物館へ行こうと決心し、進路を佐倉へとる。
と。
うそ? ウソだよね? ママ、ウソだって言ってよ!
このタイミングなんて、ジョークとしか思えないよ!
雨が降ってきやがった。
一宮のイレブンで休憩しつつ、上半身だけカッパを着ながら、なんで下半身持ってこなかったんだよーとわめいても、アフター・ザ・カーニバル。これで佐倉行きも中止だ。
覚悟を決めて、ざんざん降りの中を走り出す。
泣きながら茂原を抜け、県道13号(市原茂原線)から147号。
さらに県道14号(茂原街道)を北上し、ようやく国道16号に入るころには疲労が限界。
ま、片目ですり抜けとか、キチガイなことするからだけど。
しかし、あとは慣れた16号だ。
雨の中を必死の形相で、やっぱり片目ですり抜けつつ、木下街道入り口あたりだろうか。雨脚が弱まったなあと思ったら、あっという間に上がり、程なくしてあたりが明るくなってきた。陽光だ。ああ、なんて暖かく美しい光……顔、出すの遅すぎだ、バカ太陽。
しかし今さら博物館に向かうのもダルいし、身体は雨で冷え切っている。
俺は大きくため息をつくと、家路を急いだ。
なんだかすっかり晴れちゃった国道を、こころもち、ヤケクソ気味に。
最後はちっと残念だったが、野宿と、酒と、気まぐれなソロツーリング。
なかなかステキな、自分への誕生プレゼントだったんじゃねーかな。
自分が、ものすごく野宿向きだってこともわかったし。
また、野宿しようっと。